人事総務について、あなたが誤解していること

あなたは「人事総務」と聞いて、何をイメージしますか?

多くの人は「人事と総務は同じような仕事」だとイメージするのではないでしょうか。転職サイトでも「人事総務のお仕事」として同じカテゴリーに区分されていることってありますよね。

このように、とかく同じ種類に見られがちな「人事」と「総務」ですが、本当に同じ括りにして大丈夫なんでしょうか?

なぜ、人事総務という言葉があるのか??

「人事総務」というのは、当然ながら、「人事」と「総務」を掛け合わした言葉です。

「人事」+「総務」=「人事総務」

大企業であれば、それぞれ「人事部」、「総務部」として独立した部署になっていることが多いのですが、中小企業、特に規模が小さければ小さいほど「人事」と「総務」は掛け合わされる傾向が強いと思います。

なぜなんでしょうか?

ここに、部品を作っている中小企業があるとします。

  • 社長:父親
  • 専務:息子
  • 総務:母親、息子の嫁

このケースでは工場以外での仕事は全て、母親と息子の嫁に任せっきりになることがほとんどだと思います。総務という名のいわゆる「なんでも屋」になってしまうわけですね。

経理、労務、庶務などが中心になりますが、業容が拡大していくと、採用まで担当することになるのが、「なんでも屋」である総務なのです。

諸説あるとは思いますが、このような経緯から「人事総務」といった言葉、呼び名が使われるようになったと推測されます。

人事と総務の違いとは??

元々、「人事」と「総務」という別々の言葉、呼び名が使われていたことから、それぞれの仕事・役割にはどのような違いがあるのでしょうか。

人事と総務の役割について

人事と言うと、「採用」の仕事を思い浮かべることが多いと思います。もちろん、会社に合った人を「採用」することは大切な役割です。しかし、人事の役割はこれだけではありません。

せっかく優秀な人が入社してくれたとしても、会社の戦力、売上や利益を作ってくれる存在にしないと、会社にとって大きな損失です。うまく育てることができずに、辞めることにでもなってしまえば、その人にとっても大変不幸なことです。つまり、「育成」が人事にとって大切な役割なのです。

もう一つ、人事にとって重要な役割が「評価」です。社員が気持ちよく、安心感と納得感を持って仕事に励むことはとても重要です。特に、社員一人一人の重要度が大企業とは比較にならないほど高い中小企業においては、なおさらです。

先程も少し申し上げましたが、中小企業における総務は「なんでも屋」という位置づけになっているケースが多いと思います。しかし一概に間違いとも言えません。とても守備範囲の広い存在だと言えるでしょう。

中でも重要な役割は「労務」です。会社は法律に則って行動しなければなりません。社会保険や給与、休日などは法律で規定されています。会社が法律の下で正しく行動するための手続きやチェックが労務と言ってもいいでしょう。

人事の仕事内容とは?

人事の役割は「採用」、「育成」、「評価」と申し上げました。ということは、これらを実践していくのが人事の仕事ということになります。

実践していくためにはルールが必要です。それが人事制度です。

  • 人を採用するまでの手順は?
  • どのように育成するのか?誰に育成してもらうのか?
  • 何を評価するのか?どのように評価するのか?

このようなルールを作り、運用していくのが人事の仕事なのです。

総務の仕事内容とは?

総務の役割は主に労務であると申し上げました。

具体的には、社会保険の手続き、給与計算、出退勤・休日管理など、書類作成やチェック、管理が主な仕事になります。

人事と総務に求められる能力とは??

次に「人事」と「総務」それぞれに求められる能力を確認してみましょう。

人事に求められる能力

まず、人事に求められる最も重要な能力とは何でしょうか?

コミュニケーション能力

先程、人事の仕事をする際のルール作りというお話をさせていただきましたが、このルール、つまり人事制度は人事担当者だけで作っていいものでしょうか?

決してそうではありません。

人事制度は社員全員に関わるとても大切なルールです。今、社員は何を考えているのか?何に満足し、何に不満なのか?これらを把握することなく、人事制度を作っても「絵に描いた餅」になってしまうのです。

つまり、社員とのコミュニケーションがとても重要だということです。

総務に求められる能力

一方、総務に求められる最も重要な能力は何でしょうか?

書類作成、管理能力

総務の主たる仕事である労務は、法律に基づいて正確に処理していくことが求められるのです。

なぜ、人事は独立させなければならないのか??

業務の効率アップや経費節減のために、元々二つあった部署を一つにする、あるいは新たに部署を作るのではなく、既存部署の下に係を置くということはよくあるケースかもしれません。

このような考えに基づいて、「人事」と「総務」は同じ括りにしても大丈夫なのでしょうか?

答えはノーです。

それぞれ求められる能力が全く違うこともありますが、何より人事の仕事は人事制度の運用を通じて、経営課題、特に「人的経営課題」を発見、解決していくことが最大の使命なのです。

これはまったく労務とは異なります。言い方は悪いかもしれませんが、総務の仕事と掛け持ちで行う仕事ではないのです。

まとめ

中小企業では、「人事」と「総務」は一緒だと考えられがちですが、まったく異なるものだということはおわかりいただけたと思います。

よく会社経営には「ヒト・モノ・カネ」が重要だと言われますが、「ヒト」を大切にしたいと考えている中小企業では、「人事」が重要になるため、総務による兼任の体制では不十分だと言えるのです。

人事コンサルタント 大橋高広 公式ホームページ

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大橋 高広
株式会社NCコンサルティング 代表取締役社長|人事コンサルタント・研修講師|東洋経済オンライン記事投稿・日本経済新聞での書籍紹介│新刊『リーダーシップがなくてもできる職場の問題30の解決法』(日本実業出版社)Amazonランキング「マネジメント・人材管理」6位│その他著書『バカはブラック企業に入りなさい』(徳間書店)、『人事部のつくり方』(主婦の友社)│人事制度の設計と運用・管理職研修・職場改善研修・新卒研修・若手社員研修など「人事評価制度の設計と運営」を軸に、「組織文化形成・管理職育成・職場改善」など人事全般に関するサポートを提供