中小企業の人材育成事例にみる特徴と対策と

中小企業は大企業と異なり、研修制度が整備されていないどころか、人事部自体が存在しないことも珍しくありません。そのため、ポテンシャルの高い人材を採用したとしても、その後の人材育成を蔑ろにしたため、退職されるという自体が珍しくありません。

そもそも人材育成における課題が何かも把握していない経営者も少なくありません。

本記事では、人事育成事例を引き合いに、優秀な人材を輩出するための人材育成方法を紹介します。

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VUCA時代に求められる優秀な人材の定義

世界的なパンデミックや紛争の発生、想定外の円安による原材料の高騰、少子高齢化に伴う社会保険料の増大など不確実性の高い環境が、日本経済に脅威を与えています。そのため、こうしたVUCA時代に対応するため、日本企業の優秀な人材の定義も変わりつつあります。

経済団体が求めるVUCA時代の優秀な人材の定義は以下となります(一部抜粋)。

  • 社会的基礎力に加えて、主体性があり、課題発見能力を有する人材
  • 多様性を尊重し、価値観の異なる相手との協働できる人材
  • 課題を見出し、チームで協働して解決できる人材
  • 困難に向き合い、乗り越える人材

しかし、上記の定義に当てはまる人材は貴重であり、中小企業が求めても採用市場で見つけることが難しく、育成にも多くの時間と資金が必要です。

そのため、多くの企業では、人材育成事例を求めており、自社の人材育成につなげようとする経営者も少なくありません。

厚生労働省が発表している人材育成事例

VUCA時代で活躍できる人材の育成を目指す企業に対して、厚生労働省でも積極的に人材育成事例を公表しています。

本記事では、人材育成事例として参考にしやすい事例を紹介します。

徹底したフォロー体制と人材分析による社員教育

人事(部長)、配属部署、関連部署、管理職、教育担当者が連携し、新入社員の教育情報を共有するきめ細やかなフォロー体制を確立した上で人材育成を行っている企業があります。同時に職層に応じた研修を義務付け、個人のキャリア形成のサポートを行なっています。専門分野の技術研修をはじめ、通信教育の全額補助という福利厚生もつけることで、社員の自発的な学ぶ姿勢を促す取り組みを実践しています。

一方で、管理職への登用といった中堅社員のキャリア形成に課題を感じており、全社員へのヒアリングを通して、社員の要望を吸い上げたあと、一人ひとりの能力を発揮できる環境の構築の強化に努めています。

【参考】人材育成事例① │  厚生労働省

人材育成をマネジメントの重要課題に位置づけ

変化する環境の中で、組織を活性化させるため、「人材育成のしくみ」を構築することを優先課題として、階層別教育による基本教育の徹底、社内公開講座による相互啓発の実施、技能検定の受検と社内検定制度の構築、ワークライフバランスの取組等を実施。

従業員がキャリアに関する相談を受けるしくみの構築や各部門それぞれの従業員に偏りなくキャリア支援を行えるしくみの整備を課題としています。

【参考】人材育成事例② │  厚生労働省

上司と部下の双方向コミュニケーションによる人材育成

人材=人財とし、社員育成のために2つの目標を掲げ、 階層別、職務別等の専門教育を体系的かつ計画的に、また、業務に即応した教育・訓練を実施。チームメンバーの目標と上司の育成方針を事前に摺り合わせることで、計画を立てるため目を明確にし、課題解決や業務改善への成果へとつながっている。

【参考】人材育成事例③ │  厚生労働省

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人材育成には管理職育成が不可欠

厚生労働省の発表している事例の多くが制度の整備となっています。また、全階級を対象とした研修の実施も少なくなく、従業員が自らのキャリアを策定、邁進を支援する取り組みを紹介しています。

いずれも人材育成事例として成功していますが、人材育成の本質的な課題として、管理職の育成を目指した研修を紹介している事例は少ないと言えます。

中小企業に限らず、大企業においても管理職の育成に時間や予算をかけてこなかった傾向があります。

成果を出す現場社員の考え方や行動と、管理職に求められる考え方や行動は全く異なります。特に新任課長など現場社員から管理職へと昇進するタイミングでしっかりとした管理職研修を実施しないまま、管理職登用を行うと組織が機能不全に陥り、優秀な人材の退職や生産性の低下、労働トラブルの発生などさまざまな問題が発生します。

多くの企業が、中堅社員のキャリア形成やキャリアパスにおける会社のフォロー体制を、人材育成の次の課題として挙げる企業が少なくありません。

VUCA時代に求められる優秀な人材の定義の中でもチームメンバーとの協働で解決できる人材としています。

チームとして成果を出すためには、管理職育成が欠かせません。

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管理職研修による人材育成を!

現場の社員を優秀な社員へと成長させるためには、チームを牽引する管理職とチームメンバーとの信頼関係の構築が不可欠です。

しかし、多くの管理職がプレイングマネージャーであり、現場社員時代の考え方や行動に基づいたマネジメントを実践していることが珍しくありません。

現場社員と管理職では、求められる役割や能力は全く異なるため、新任課長といった管理職に登用されるタイミングで、適切な管理職研修を実施する必要があります。

管理職としての意識改革や役割認識、チームメンバーのパフォーマンスを最大化するためのフォローアップスキル、信頼関係を構築するための具体的なコミュニケーション方法を学び、実践を通じて、管理職としての能力を向上させなければなりません。

また、管理職の階級に応じた教育も必要であり、会社が成長してほしい人材像に合わせた管理職を育成することが、全従業員の成長と育成につながります。

まとめ

人材育成を通じて、会社と従業員の成長を促そうとする企業が多い反面、仕組みや制度に依存する企業も少なくありません。

しかし、人材育成のおける課題の本質的な問題は、人材育成の鍵となる管理職の育成が十分に行われていないことが挙げられます。

人事評価や研修制度の整備とともに、まずは管理職の意識改革や実践で使えるマネジメント方法を学ばせる管理職研修の実施が望ましいと言えます。

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人事で損する『企業』と『人』をなくしたい

会社にとって、莫大な利益流出につながる『採用費』。実は職場が良くなれば、採用には困りません。職場の良さを発信するだけで人は集まります。リファーラル採用(口コミ)もできます。さらにスタッフも定着します。だからこそ、いつまでも利益を採用費に垂れ流すのではなく、人事に取り組んで、良い会社をつくって欲しい。そう考えています。

スタッフにとって、キャリアアップは重要な課題です。そのために、さらに『実務スキル』をきわめていこうとする方が多いです。しかし、一定レベルまで昇格すると頭打ちします。それは、部下を育てたり、チームの成果を上げるという『マネジメントスキル』が不足しているからです。皆様にはぜひマネジメントスキルを身につけていただき、さらに活躍の幅が広げて欲しい。そう願っています。

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大橋 高広
株式会社NCコンサルティング 代表取締役社長|人事コンサルタント・研修講師|東洋経済オンライン記事投稿・日本経済新聞での書籍紹介│新刊『リーダーシップがなくてもできる職場の問題30の解決法』(日本実業出版社)Amazonランキング「マネジメント・人材管理」6位│その他著書『バカはブラック企業に入りなさい』(徳間書店)、『人事部のつくり方』(主婦の友社)│人事制度の設計と運用・管理職研修・職場改善研修・新卒研修・若手社員研修など「人事評価制度の設計と運営」を軸に、「組織文化形成・管理職育成・職場改善」など人事全般に関するサポートを提供