また、製造業に関わらず、全ての業界や職種において、現場の実作業を担う現場リーダーの価値は高く、将来、管理職(マネージャー)に昇進する貴重な人材です。
本記事では、中小企業が育成したい現場リーダーに求める役割や視点のほか、現場リーダーの育成に関する課題を解説します。
現場リーダーとは
現場リーダーとは、実作業を伴う現場やチームに課せられた目標や業務を達成するためにチームメンバーを牽引する役割をもった役職です。
会社によっては、チームリーダーや主任、チーム、シニアスタッフと呼ばれています。
主な役割としてチーム業務の方針の決定や現場レベルでのチームメンバーの育成やフォローアップを役割を担います。
また、一般的な管理職(マネージャー)との違いとして、1プレイヤーとしてチームリーダー自身も業務を担います。
一方で、プレイングマネージャーと呼ばれる管理職が増えているため、責任や役割の違いのみ言及されることも多いと言えます。
最も有名な現場リーダーの概念として、「トヨタ式製造現場リーダー」が挙げられます。
「人間はすごい」「人間の知恵には限界がない」という考え方を前提とした人材育成をおこなっているトヨタでは、製造現場リーダーに『製造現場で求められる「知恵」を発揮して、業務や育成に取り組む」という役割を求めています。
現場リーダーが求められる役割とは
現場リーダーの役割は、主にチームでの業務を迅速に推進させることが重視されます。
また、現場リーダーを管理職(マネージャー)の登龍門であると考える企業も多く、チームメンバーの人材育成の役割も担います。現場リーダーに求められる役割を解説します。
チームメンバーの模範プレイヤー
現場リーダーは業務をこなすプレイヤーとして、他のチームメンバーの模範となる役割を担います。
チームの目標や業務を迅速に推進するために、決まったルールの遵守や高い業務遂行能力が求められます。
また、仕事に対する姿勢や考え方を持ち、創意工夫(試行錯誤)をおこないながら、業務を進めていきます。
現場の目標や方針の決定
現場リーダーは、会社や上司から与えられた目標や業務を正確に理解し、現場の目標や方針に落とし込む役割が求められます。
期限までに業務を終えるために必要な日々の目標と業務の方針を決定します。
また、チームメンバーの声に耳を傾け、チームとして支障なく、業務を遂行できるように調整をおこないます。
現場全体に目標や業務内容の共有する
現場全体に作成した目標や業務内容の方針、その意図を正確に共有する役割を担います。
わかりやすい言葉を使うだけでなく、常日頃から部下との信頼関係を構築し、各メンバーの能力や適性に応じた具体的なアクションプランを示し、伝える必要があります。
業務改善をおこないながら、進行する
チームメンバーの業務進捗を把握・管理しながら、業務のムダを見つけ出し、改善していく役割を求められます。
また、チームメンバーが働きやすい現場を実現するために現場改善もおこないます。主に生産性、積極性、効率性の3つを意識した現場改善が必要です。
人材育成を目的とした指導とフォローアップ
チームメンバーの人材育成を目的とした、業務の指導、フィードバックをおこなう役割を担います。
また、チームメンバーが能力や適性を最大限発揮できるように必要に応じたフォローアップをおこないます。
フォローアップはチームメンバーとの信頼関係構築に必要な重要な役割であり、管理職(マネージャー)に必須の役割のため、現場リーダーの段階から実践させておくことが大切です。
現場リーダーにリーダーシップは必要?
現場リーダーに必要とされるリーダーシップは、主に4つ存在します。
- 参加型リーダーシップ
- 説得型リーダーシップ
- 説明型リーダーシップ
- 委託型リーダーシップ
しかし、最近ではリーダーシップよりもフォロワーシップが重要とされており、チームメンバーとの信頼関係の構築や業務を推進する上でも重要な能力として求められています。
現場リーダーが意識すべき心得とは
現場リーダーに求められる役割のひとつに、現場改善が挙げられます。
業務の効率化以外にチーム目標を達成するための信頼関係の構築や働きやすい環境を作り出す重要な役割です。
現場改善をおこなうために、現場リーダーには問題意識と当事者意識を持って、取り組む姿勢が求めらえれます。
現場における問題に気づき(問題意識)、自分にも責任の一端がある(当事者意識)と考えながら、自主的かつ自律的に行動することが必要です。
そのほかにも現場リーダーには、以下の心得が必要です
- 現場リーダーに伝達ミスがあった場合、その失敗は現場リーダーの責任
- 教える上で一度で覚えられる人は数少ない
- 完璧な現場リーダーはいない
現場リーダーにも役割認識が必要
現場リーダーに求められる役割は、管理職(マネージャー)で求められる役割の基礎となります。
そのため、現場リーダーにも管理職と同様に自分の役割認識を促す必要があります。
「現場リーダーは管理職ではない」と考えている経営者や現場リーダーが多い中、来たる管理職登用に向けた管理職研修が必要です。
現場リーダーの多くが「自分は管理職ではない」と考えている
現場リーダーと呼ばれる役職は、主に主任やシニアスタッフとも呼ばれています。
実際に現場リーダーは管理職ではありませんが、求められる役割は管理職(マネージャー)に求める役割に近いと言えます。
しかし、経営者だけでなく、現場リーダー自身も「管理職ではない」という意識が強く、通常スタッフの延長戦上にあると考えがちです。
問題意識と当事者意識を持って、業務に取り組み、チームメンバーを牽引してもらうためには、「自分は管理職に近い人間である」という意識改革をおこなう必要があります。
管理職研修の重要性
中小企業だけでなく、多くの日本企業は新人教育には時間と費用をかけてきましたが、肝心の管理職(マネージャー)への教育支援を十分にしてこなかった歴史があります。
現場リーダーのような、いわゆる、準管理職に該当するにも自分に与えられた役職の役割を認識させる必要があります。
管理職登用の前から意識改革をおこなうことで、当事者意識が生まれます。
また、現在の管理職の多くはプレイイングマネージャーとして活躍しています。
そのため、プレイヤーとしての能力や高い一方で、人材育成や部下とのコミュニケーションが苦手である傾向があります。
職場の問題は上司と部下の信頼関係がないことに起因します。
定期的に1on1ミーティングをおこなっていたとしても「最近、どう?」と問いかける管理職は管理職失格といえます。
優秀な管理職(マネージャー)は普段から部下の行動を記録し、上司と部下との間で評価基準や達成度の判断基準を取り決め、適切なフォローをおこないます。
管理職に必要な能力は、一朝一夕では身に付かないため、現場リーダーの段階から役割認識・意識改革をおこなっていくことが大切です。
まとめ
現場リーダーは、将来、優秀な管理職やプレイヤーを生み出すための重要な役職といえます。
現場リーダーは、管理職やマネージャーがもつ能力やスキルが必要な役割も担っています。
そのため、現場リーダーの育成においても、管理職やマネージャーに丸投げするのではなく、役割認識を目的とした研修を定期的に実施しましょう。
中小企業の多くが占める製造業では、製造現場を任せられる現場リーダーは今も変わらず、重要な存在です。