また、若手社員を中心に「管理職になりたくない」、「管理職になったら負け」という考えが広まっており、かつての出世の代名詞であった管理職登用がもはや若手社員から指示されないキャリアとなりつつあります。
この変化は、新人や若手社員の意識の問題ではなく、"今"の管理職の意識の問題といえます。極端にいえば、管理職に”やる気”がないため、若手社員が管理職になりたくないと考えると言っても過言ではありません。
今回は、現在の管理職が変わらざるを得ない理由と管理職研修の最大の目的が意識改革と役割認識であることを解説します。
なぜ管理職が変わらないといけないのか
仮に業務遂行能力や個人業績が評価され、管理職・マネージャーについたとしても、若手社員を育てるというスキルを持っているとは限りません。
日本企業は、OJTで業務を教えることはできても、成果を出せる社会人として教育するスキルを持たずにして、管理職となってしまうケースが多いといえます。
また、管理職になれば、チームメンバーだけでなく、他部署や外部組織とのコミュニケーション機会が増え、さまざまな利害関係の中、発生する軋轢に対して、迅速に解決できるスキルが必要です。
しかし、管理職に必要なスキルがないまま、こうした軋轢を解決することは困難であり、自分に対する自信の喪失につながりかねません。
また、生産年齢人口が減少していく中で、優秀な人材の獲得・定着が急務となっています。現在、管理職についている人材が入社した時、現在の労働環境や法令も全く異なっており、組織に対する考え方も世代によって、異なります。
さらに「45歳以上定年」という言葉出てきたように、リカレント教育(学び直し)の重要性が高まり、フリーランスをはじめとした多様な働き方が浸透する中、マネジメントをおこなう管理職と現場の労働者の労働観の乖離が激しくなってきます。
また、自分より年上の部下をマネジメントする機会も増えており、管理職のマネジメントスキルはさらに高度な技術を求められます。
こうした組織で働く変化に対して、マネージャー・管理職は柔軟に対応し、かつての強靭なリーダーシップが求められるのではなく、フォロワーシップが求められるため、企業としても管理職研修を通じて、対策・教育をおこなっていく必要があります。
管理職に必要な意識改革と役割認識とは
管理職研修は、現在の管理職が持つ過去の労働観を変え、組織における自らの役割を再認識することが大きな目的となります。
意識改革とは
意識改革とは、自分が置かれた状況や自分が持つ知識・感情・意思と再度向き合い、根底から変えていくことを意味します。
ビジネスにおける意識改革とは、「自分が正しいと思っていた今までの常識や考え方、認識を変える」作業となります。
管理職研修では、マネージャー・管理職を対象にし、価値観を含む根底から考え方や認識を変えるためのアプローチをおこないます。
役割認識とは
役割認識とは、自らに期待される役割を理解することです。
管理職においては、組織で定められた管理職としての役割定義を確認し、上席が期待する役割を聞き出し、チームメンバーそれぞれの役割をチームメンバーに理解させることが大きな役割となります。
管理職と現場社員ではやるべきことが異なる
管理職に登用されたとしても、現場社員だったことの考え方や役割では、組織をマネジメントすることはできません。
そのため、マネージャー・管理職は「管理職になったら、やるべきことは何か?」ということを考え、今までの自分の中で意識を改革しなければなりません。
しかし、自ら意識改革することは難しく、管理職研修を通じて、管理職が意識すべきことや認識すべき役割を教育していくことで、管理職自身に気づきを与えることができます。
管理職の意識改革・役割認識が進まない原因とは
「なぜ意識改革に、わざわざ管理職研修が必要なのか?」、「現場で十分成果をあげてきたのだから、マネジメントもできるだろう」と考える経営者の方もいらっしゃいますが、それは間違いです。
そもそも人は新たな取り組みをすることが苦手であり、自ら変化することに対して、周囲から協力や反応を得られないときに疎外感を感じる生き物だからです。
人間の脳は現状を変えることに消極的になりやすく、現状を変えた結果、プラスの効果を目にしないと継続することが難しいといわれています。
また、他部署や外部組織との関わりが増える中で、さまざまな利害関係が発生するため、自分が変わることに対して、必ずしも肯定的に反応されるとは限りません。
むしろ、否定的な反応が多いといえます。
このように自らの変化することが難しく、否定的な反応が返ってきやすい状況では、自ら能動的に意識改革を行っていくことは大変難易度の高いこととなります。
また、分業による働き方が浸透している日本企業において、多くの従業員が目の前に与えられた業務をこなせば、役割を果たしていると謝った認識を持っています。
役割認識とは、やるべき業務を認識することではなく、組織において、どういった役割を期待されているかということを認識する行為です。
マネージャー・管理職は、チームだけでなく、他部署や外部組織との関わりも増える中、組織における役割(管理職としての役割)を認識しなければ、組織の生産性を高めることはできません。
意識改革・役割認識を妨げる要因
マネージャー・管理職の多くは現場で成果を上げてきた人材が登用されます。
人事制度や人事考課上、正しい基準ではありますが、管理職としての意識改革や役割認識を持たせないまま、管理職になると「成功者としてのプライドが増長し、自分は間違っていない」と思い込むようになります。
表面上は変化しようと見えるが、根本的な考え方を変えない限り、部下の育成や職場環境の改善は難しいといえます。
また、そもそも現場で成果を上げてきた社員の多くは、部下の育成に苦手意識があることが多く、また、成功者としてのプライドにかなった自信を持っていないことも珍しくありません。
こうした理由から、今までの考え方を一度リセットして、自らの役割を再認識させる管理職研修が重要となります。
一方で、マネージャー・管理職が会社や制度への不満を持っていることがあります。そのため、会社から言われるがまま、マネジメントをおこなうモチベーションが低く、組織の生産性を下げてしまっている可能性があります。
同時に人事制度や人事考課の設計を見直す必要があります。
管理職研修における意識改革と役割認識:まとめ
管理職研修は、特に中小企業において、大きな変化をもたらします。
中小企業は従業員数が少ないため、従業員同士の距離が近い傾向があります。そのため、経営者は「社員同士はコミュニケーションが取れている」と勘違いしがちです。
管理職自身もコミュニケーションが取れていると勘違いしていることも多く、管理職研修を通じての意識改革や役割認識を促すことで、部下の育成や職場環境の改善に大きな効果を得られます。
新人研修や若手社員研修など業務経験が少ない人材に教育投資を積極的におこなう一方で、管理職への教育をしっかりしていない企業が増えています。