どんなに業務効率化をしたとしても完全な無人化ができない以上、現場を動かすリーダーの存在は不可欠です。
本記事では、中小企業こそ育成したい現場リーダーが持つべき心得や視点、現場リーダーに関する課題や悩みを中心に解説します。
現場リーダーに必要な3つの要件とは
大企業や中小企業など規模に関わらず、経済活動を行なう現場リーダーの存在は必要不可欠です。
しかし、多くの企業が現場リーダーを出世までの過程としてかみておらず、準管理職として育成をしていない現状があります。
職場環境の改善や労働生産性向上には、現場リーダーの育成が欠かせません。
現場リーダーを育成するにあたり、経営者として現場リーダーに必要な3つの要件を理解しておきましょう。
現場リーダーの役割を認識する
管理職(マネージャー)は会社から求められる役割を認識し、自分がどのように会社やチーム、チームメンバーに貢献すべきかを考え、行動する能力が必要です。
現場リーダーも同様に「現場リーダー」を”仕事”として認識し、チーム内の目標や優先順位を決定し、現場の状況(現実)と目標の乖離があった場合も整合性の取れた妥協案や打開案を策定・実行できるかが必要です。
自分やチームメンバーの行動を客観的に振り返る
現場リーダーは業務をこなすだけでなく、自分やチームメンバーの業務や意思決定の過程を客観的な視点を持って、振り返る必要があります。
現場リーダーを含めた客観的な振り返りは業務のムダや課題に気付くきっかけになり、職場環境の改善や労働生産性の向上につながります。
現場リーダーに客観的な振り返り能力を得てもらうためにも、現場リーダーの役割認識を促し、まずは自分の行動を定期的に振り返ってもらうことが有効です。
上司やチームメンバーとの信頼関係の構築
会社や上司の不満の根本的な原因は、上司と部下の間に信頼関係が構築されていないことが挙げられます。
準管理職でもある現場リーダーの段階から、チームメンバーとの信頼関係を構築する能力を身につけることで、管理職やマネージャーに昇進してもチームメンバーのモチベーションや労働生産性を高く維持できます。
しかし、日本企業の管理職が現場リーダーの時代から十分な管理職研修(マネージャー研修)を実施されなかったこともあり、プレイングマネージャーとしての活躍が長かったこともあり、部下との信頼関係構築力が低いと言われています。
普段のコミュニーションの中で、チームメンバーと「どこまでの業務をこなせば、評価が高くなるか(個人に合わせた評価基準の取り決め)」を取り決め、しっかりとフィードバックすることが信頼関係の構築につながります。
現場リーダーに求められる能力・視点とは
現場リーダーには、与えられた目標を達成するため、4つの能力が必要です。
業務遂行力が中心ですが、引き続き、管理職に必要な能力でもあるため、実践を通じて、身につけておきたい能力でもあります。
会社の経営資源を有効に使う能力
現場リーダーには、会社の経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)を適切に使い、業務を遂行し、目的の達成や会社の利益向上に役立てる能力が必要です。
実際に予算管理は管理職(マネージャー)が行なうことが一般的ですが、予算の範囲内で裁量権を持たせ、最適なチーム構成や業務内容の構築する能力を育成するためには、現場リーダーの段階から会社の経営資源を意識した業務遂行を経験させましょう。
現場の意見を反映した実行手順の作成力
現場の意見や声を反映した実行手順の作成力は、現場リーダーに欠かせない能力です。
現場の作業量や品質を正確に把握した上で効率的かつ正確なやり方や手順を作成し、現場に落とし込まなければ、チームワークによる経済活動は行えません。
実践力(決めたことを自ら実践する)
現場リーダーが作成した実行手順を自ら遂行し、達成できるか検証しながら、実際の業務として実践する力がです。
自分が決めたルールや期限、手順、やり方の中で、自分だけでなく、他のチームメンバーが行えるかどうか検証・確認を行いながら、業務を実践します。
進捗管理や教育・指導(ルールの徹底)
現場リーダーが作成した業務の進捗を管理し、チームメンバーに落とし込み、ルールや手順、やり方を徹底する教育・指導する能力が必要です。
とくにチームメンバーへの教育・指導を怠ると、想定した作業・対策ができない、決めたことが守られずに作業進捗に遅れが出る(戻しが増える)、作業を間違えて、不良が発生する、決めた作業が継続できずに不良が再発するなどの支障が発生します。
感情をコントロールする
感情の起伏が激しい人材は現場リーダーには向きません。現場リーダーも管理職と同様に安定性が求められます。
期限間近や目標達成まであと少しというところで、感情が乱高下する現場リーダーはチームメンバーを混乱させ、モチベーションを低下させてしまいます。
困難な状況に陥った時でも常に冷静で現場に最適な意思決定をおこなえる素地を現場リーダーの段階で醸成させることは、のちに管理職(マネージャー)に昇進した後だけでなく、部下との信頼関係構築にもつながります。
数字を使いこなせる
ビジネスは数字で語ることが多いため、予算や品質などさまざまな数字を使いこなせることが大切です。
数字を使うことで、業務内容や目標を伝えやすくなるほか、進捗管理にも強い現場リーダーに育成することが可能です。
明確な言葉でコミュニケーションができる
自分が知っている言葉や業界の専門用語だけでなく、誰でもわかる明確な言葉でコミュニケーションを取ることが大切です。
現場リーダーに必要な心得
現場リーダーが現場で活躍するためには、以下の心得と行動が必要です。
現場リーダーに伝達ミスがあった場合、その失敗は現場リーダーの責任
現場リーダーが決めた手順ややり方、ルールがチームメンバーに伝わり切っていない場合、伝達ミスにより起きた失敗は現場リーダーの責任であることを認識しましょう。
会社が現場リーダーに求められる能力のひとつに「進捗管理や教育・指導(ルールの徹底)」があり、現場リーダーとしての役割を認識していないと判断されます。
一度で覚えられる人は数少ない
世の中には、いわゆる”地頭が良い”人が存在しますが、世間一般の人は一度で覚えられる人は圧倒的に少ないことを認識しましょう。
また、チームメンバーにはさまざまな価値観を持つ人材がおり、多様性が重視される世の中において、「記憶力が良い人間を優秀な人間と判断する」行為自体が時代遅れとなります。
また、管理職(マネージャー)にはフォロワーシップ(メンバーを支援する役割)が必要不可欠であり、現場リーダーのうちにチームメンバーの特性に応じて適切にフォローアップできるスキルを身につけておく必要があります。
完璧な現場リーダーはいない
世の中には、”完璧な現場リーダーはいない”ということを認識しましょう。
現場リーダーには、緻密な進捗管理や業務遂行能力が必要ですが、管理職やマネージャーなど役職が上がるにつれて、想定外の事態が多く発生します。
完璧を目指す人間は、会社や社会において、価値の高い人材ですが、同時にメンタルの不調や長時間労働のきっかけにもつながりかねません。
与えられた目標や業務をきちんとこなしつつも、完璧なリーダーを目指すよりも実践を通した試行錯誤や経験を積むことに重きをおきましょう。
まとめ
現場リーダーは会社が経済活動を行う上で欠かせない存在です。
一方で、プレイングマネージャーが増えつつある日本において、現場リーダーをはじめとした管理職研修・マネージャー研修に力を入れる中小企業はとても少ないと言えます。
厳密に言えば、現場リーダーは管理職でもマネージャーにも分類されませんが、求める能力や心得は管理職に近いものがあるため、現場リーダーの段階から役割を認識してもらう必要があります。
IT化やDXによる業務効率化が進み、少数精鋭の経営に舵をきる中小企業が多い中、優れた現場リーダーの存在が再注目されています。