経営理念に合わせてスタッフが動く社内風土のつくりかた

人事コラム

経営理念に合わせてスタッフが動く社内風土のつくりかた

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時間外労働(残業時間)の上限規制や同一労働同一賃金に加え、急速に普及するテレワーク、ジョブ型雇用・公平公正な成果主義の浸透は、経営者や従業員に「今後の働き方」を真剣に考える良い機会といえます。

では、限られた時間内で経営理念を基にしたミッションや経営戦略を達成していくためにはどうするべきか?

こんな経営者の悩みを解決します。

経営者の課題

  • 従業員・スタッフの自律性や生産性を高めたい
  • 従業員・スタッフのチームワーク力を高めたい
  • 組織の目標を達成する社内風土の作り方を知りたい

結論:社内風土は”働きやすさ”ではなく、”目標を達成する”ためにつくるべき

 

それでは、解説していきます。

 

”働きやすさ”を勘違いする企業と従業員

”働きやすさ”を勘違いする企業と従業員

ホワイト企業を中心に、多くの日本企業では”働きやすさ”を勘違いし、社内風土と紹介する傾向があります。

 

世間一般的な”働きやすさ”には、さまざまな認識があります。

世間一般的な働きやすさ

  • 残業が少ない
  • 有給休暇が取得しやすい
  • 育児・介護休暇に寛容な職場
  • 女性が活躍できる職場
  • 風通しの良さ(役職に関係なく、「さん付け」で呼び合える)

 

確かにコミュニケーションが取りやすい、若手を登用する、労働者の権利として保障された休暇を取りやすいなどの社内風土は大切です。

また、時代錯誤で悪しき慣習を引きづったままの企業は、すぐにでも労働環境を改善すべきです。

 

しかし、ご紹介したような”働きやすさ”が経営戦略上の目標達成に結びつくか、従業員・スタッフの生産性向上につながるかというと決してそうではありません。

 

中でも、「さん付け」で呼び合える「風通しのよさ」を社内風土としてアピールする企業は少なくありません。

しかし、こうした社風は本当に生産性の高い組織を作り上げる要因となっているのでしょうか。

 

不確実性が高く、大企業がいとも簡単に債務超過に陥ってしまう時代において、”目標を達成する社内風土”とは、しっかりと成果に結びつける環境や仕組みがあるかが鍵となります。

 

成果に結びつく社内風土とは、”成果を出すため”の環境や仕組みが社内に文化として浸透しているかどうか

 

キーエンスとプルデンシャル生命保険の社内風土とは

キーエンスとプルデンシャル生命保険の社内風土とは

経営理念や経営戦略に基づいた社内風土を持つ企業は、株式会社キーエンス(以下、キーエンス)やプルデンシャル生命保険株式会社(以下、プレデンシャル生命保険)が該当します。

2020年3月に出版した「バカはブラック企業に入りなさい」(徳間書店)から一部抜粋して、解説します。

 

平均年収1800万円超えの株式会社キーエンスが誇る社内風土

「30代で家が建ち、40代で墓が建つ」という神話がまことしやかに語られる株式会社キーエンスは、「給与の高い会社ランキング」で毎回トップクラスにランクインする、自動制御機器・計測機器の製造・販売で知られる企業です。

 

2019年3月期の有価証券報告書によると、キーエンスの平均年収は1800万円(18,392,309円)を超えており、営業利益率50%を超えている超優良企業といえます。

しかし、冒頭でご紹介した神話があるように激務のイメージが浸透するキーエンスでは、なぜ労働環境の問題など従業員トラブルが報じられないのか。

筆者は「キーエンス」という会社の社内風土にこそ、解明する鍵があると確信しています。

 

キーエンスがこれだけ高い営業利益率を誇り、社員に高額の給与を支給する秘密には、業務の「合理化」を徹底するための育成とチームで目標を達成していこうとする雰囲気にあります。

 

つまり、がんばりたい人ががんばることができる社内風土(仕組み)が存在していることを意味します。

筆者の独自取材から、実際にキーエンスでは、こうした社内風土と考え方が合っている人が長く働いていると感じています。

キーエンスの社内風土

  • 業務の「合理化」を徹底するための育成
    利益を追求するためにはどうすれば良いかという育成がマニュアルとして示された上で、定期的に研修や勉強会などで実践されている
  • チームで目標を達成していこうとする雰囲気
    部下の業務をしっかりと把握した上での1on1面談を定期的に実施し、目標達成に向けたフォローをしている

 

キーエンスは21時以降の残業は禁止する徹底した業務管理を行っており、業務時間内に成果を達成する働き方を推奨しています。

【参考】株式会社キーエンス 有価証券報告書第51期(2019年3月21日-2020年3月20日)[PDF]

 

労働市場価値の高い卒業生が多いプルデンシャル生命保険

高い離職率とシビアな成果主義を誇るプルデンシャル生命保険株式会社は、「生命保険業界営業力ナンバーワン」の異名を持つ企業です。

 

プルデンシャル生命保険の最も特徴的な制度は、成果を上げた際の給与への反映海外旅行を含む豪華な表彰式典への参加といった、すさまじいほどのインセンティブ制度です。

 

さらに、営業成績を獲得するための独自の研修プログラムが実施されています。

 

プルデンシャル生命保険の社内風土

  • 常識では考えられない高いインセンティブ制度
    成果が完全に給与に連動する人事評価のため、モチベーションアップにつながる
  • 営業成績を獲得する独自の研修プログラム
    根性頼みの営業手法ではなく、きちんと成果を出すためのノウハウを提供してくれる

 

このように、キーエンス、プルデンシャル生命保険では、独自の育成体制やチームワークを高める雰囲気、高いインセンティブ制度を敷くことで、経営理念・経営戦略を達成できる社内風土を作り出し、社員の生産性を高めることに成功しています。

 

こうした実情を見ると、得体の知れない神話や高い離職率だけで「ブラック企業」という烙印を押すことは適切ではありません。何より「両社がブラック企業体質」とメディアで報道されることがないことが実態を裏付けているのではないでしょうか。

 

もっと仕事して成果を出したい!そんな人たちの「働き方の多様性」はどこへいった?今の働き方改革は、単に働く時間を短縮しているだけ。仕事での成長の機会を奪う、人材の使い捨てを助長する施策と思えてならないのです。ブラック企業を独自の視点で2種類に分けて考察。

 

社内風土によっては、去る社員もいる

社内風土によっては、去る社員もいる

キーエンスやプルデンシャル生命保険での、ケタ違いの業務の合理化や成果に対するインセンティブ高さ、そして成果を出すための徹底した教育体制は立派な社内風土です。

 

一方で、こうした経営理念や経営戦略に基づく社内風土が肌に合わず、退職していく従業員も少なからず、存在します。

しかし、こうした現象は当然といえ、むしろ社員・スタッフを自律的・自発的に人材に変え、次々と成果を求める社員に入れ替わるため、社内に新陳代謝をもたらします。

 

現在、大企業を中心に”ぶら下がり社員”が問題となっています。

※ぶら下がり社員とは、指示・与えられた仕事をこなす反面、求められる以上の役割を果たさない、仕事や組織へのコミットが弱い問題社員の類型のひとつ。

前述でご紹介した「勘違いされた”働きやすさ"」を前面に押し出した社内風土では、評価基準も曖昧であり、ぶら下がり社員や早期退職対象となる人材が必ず輩出されてしまいます。

 

一方で、経営理念や経営戦略にあった社内風土は、ぶら下がり社員にとって、良い意味で居心地が悪くなってしまいます。

 

しかし、誤解を恐れずにお伝えしますが、成果につながる社内風土は決して追い出し部屋の類のものではありません

 

仕事や組織にコミットできない状況は、企業・従業員にとっても不幸な状況といえます。

組織として、新陳代謝を促すことは、去っていく従業員とっても、自分がコミットできる組織・環境を認識する上でも良い機会となります。

そして何より目標達成に向けて頑張る従業員にとって居心地の良い職場を提供することになります。

 

経営理念に合った社内風土の機能

  • ぶら下がり社員が生まれない
  • 生産性が高い組織へと新陳代謝を促す
  • 成果を出す優秀な人材が生まれる・集まる

 

経営理念に合わせて社員・スタッフが動く、”目標を達成する”社内風土の作り方

経営理念に合わせて社員・スタッフが動く、”働きやすい”社内風土の作り方

経営理念や経営戦略に合わせて社員やスタッフが動く社内風土の作るためには、「人事部の設置」、「公正公平な評価制度」、「1on1ミーティングの実施」、「社員を真剣に育てる研修プログラム」の構築が大切です。

経営者の課題

  • 人事部の設置
  • 公正公平な評価制度
  • 1on1ミーティングの実施
  • 社員を真剣に育てる研修プログラム

それでは、解説していきます。

 

人事部の設置

大企業と中小企業の大きな違いは、人事部の存在です。

 

中小企業ほど「総務部人事係」となっており、人事評価や人材育成や採用を片手間で行っている企業が少なくありません。

成果を出す人材を生み出すためには、人事の専任担当者を選定し、人事部の立ち上げに尽力する必要があります。

 

成果を出す人事部の立ち上げには、以下の5つのステップを踏むと効果的です。

step
1
人事部長を決める(人事担当者)を決める

step
2
現状を把握する

step
3
人事制度をつく

step
4
人事制度の説明会を行う

step
5
人事制度を運用する

 

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成果に報いる公平公正な人事制度の設計

人事制度には、根幹となる「等級制度」に加え、「人事評価制度」「賃金制度」の3つがあります。

人事制度 内容
等級制度 職能資格制度、職務等級制度、役割等級制度の3つがあり、等級制度は会社が求めている人材のモデルとなります。
人事評価制度 人事評価制度とは、一定期間の成果や行動を評価する仕組みを定めた制度であり、社員が自発的に動き出す評価シートをつくることが大切です。
賃金制度 基本給、賞与、諸手当、退職金制度、福利厚生を含めた制度の総称です。等級制度と連動しており、基本給を決める賃金テーブルもこちらに含みます。

等級制度の選定は、社長の思いだけでなく、社員の希望や理解度を考慮した上で決めることをおすすめします。

これらの人事制度をつくることが、自社に合う社内風土の形成にも影響を与えます。

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1on1ミーティングの実施

単なる”風通しの良い”社内風土は役に立ちませんが、社員の自発的な成長を促す1on1ミーティングは効果的です。

1on1ミーティングとは、定期的に上司と部下が1対1で面談を行い、部下が自ら答えを導き出すサポートを行う人材育成方法です。

 

上司からの一方的な指示(伝達)といったコミュニケーションではなく、人材育成に分類される点が面談や面接とは異なります。

部下自身が孤立していないことを感じることができ、チームで目標を達成していくという社内風土を浸透させることにも効果的です。

社員を真剣に育てる研修プログラム

本当に良い企業とは、社員を真剣に育てる体制を確立しているかどうかがポイントとなります。

形式や年功序列に則った研修プログラムは、本当の意味で社員を育てません。

 

社員は企業に勤めている以上、成果を出すことが求められます。

企業が社員を真剣に育てる研修プログラム経営理念を実践するための行動指針マニュアルを作成することで、組織一丸となって目標達成をしていく社内風土を作り上げることができます。

 

研修プログラムやマニュアルは、企業が目指す経営理念や社員のあり方を反映したものとなります。自社の特性に合わせて、作成することをおすすめします。

 

社員・スタッフが自発的に動く"目標を達成する"社内風土:まとめ

世間一般的に良いとされている社内風土は、必ずしもあなたの会社の成長にとって良いとは限りません。

また、従来の社内風土を成果を出すための社内風土へと変革することは、少なからず反発が起こります。

 

一方で、経営の不透明性が増す現代において、目標を達成する骨太の組織を構築することは急務とされています。

自社にとって、社員にとって、”目標を達成する職場”は何か、社員が本当に幸せを感じる社内風土は何か、を今一度見直すタイミングに来ています。

 

目標を達成する社内風土とは

  • 「良い社員」が集まるのではなく、「合う社員」が集まる社内風土が望ましい
  • 社内風土を180度変えることは、反発する社員が現れ、公正公平に評価されるべき人材が残る
  • 社員が成果を上げるためにはチームワークを発揮し、組織目標を達成できる社内風土が求められる

「そんなことができるのは大企業だけ」とか、「中小企業やベンチャー企業にはとてもじゃないけど難しい」とかと考えてしまっては、何も進みません。 ぜひ勇気を持って、最初の1歩を踏み出してください。

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  • この記事を書いた人
大橋 高広

大橋 高広

株式会社NCコンサルティング 代表取締役社長|人事コンサルタント・社外人事部長&社外CHRO・ビジネス作家|あなたの会社の採用・育成・定着を強くする人事のプロ|人事評価制度と面談が得意|最近はブランディングとマーケティングのご相談も急増中|著書重版|現状維持は衰退|プラス思考の方と互いに高め合っていきたい|新刊執筆中

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