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不確実性の高い経営環境を乗り越えていくためには、強いリーダーシップと人望を兼ね備えた優秀な人材の重要が高まっています。中でもチームメンバーに明確なビジョンを示し、高いモチベーションで業務遂行を導く管理職の存在は必要不可欠です。今回は優秀な管理職の成長を促すために効果的なアップワードフィードバックをご紹介します。

アップワードフィードバックとは

アップワードフィードバックとは、チームメンバー(部下)から上司に、上司の仕事ぶりや上司にとって有益となる意見・アドバイスを伝える手法を意味するビジネス用語です。

近年では、上司とチームメンバー(部下)との信頼関係の構築が組織の生産性向上に不可欠であり、管理職である上司自身に“気づき”の機会を与え、成長を促すことに注目が高まっています。

また、アップワードフィードバックは管理職の人事考課の一部ではなく、あくまで上司が自分自身と向き合うための“気づき”の機会として導入することが大切です。

一方で、管理職へのフィードバックをチームメンバーから募る際は、匿名で行い、チームメンバーの心理的負担もなくすことも必要です。

管理職に必要な要素とは

労働者の価値観が多様化していく中で、働き方や上司に対する考え方も変化しています。その結果、業績だけで管理職が有能かどうかを見極めることが困難な時代へと変わっています。また、業績至上主義の評価制度ありきでは、上司とチームメンバーの信頼関係はおろか、評価制度そのものへの信頼が損なわれてしまいます。

そのため、優秀な管理職を育成するためには、管理職自身が優秀な管理職に必要な要素を理解して、成長していくことが必要です。

優秀な管理職の特徴

組織の生産性を高める優秀な管理職の特徴は以下が挙げられます。

・直属の部下から尊敬、または好かれていること

・チームメンバーにパフォーマンスを改善できる建設的なフィードバックができる

・チームメンバーの長所、短所、潜在能力を把握している

・管理職自身に成長す力がある

管理職が上記の要素を身につけるためには、日頃からチームメンバーとのコミュニケーションを重視しなければなりません。

しかし、「最近、どうですか?」、「悩んでいることや不満はないですか?」といったその場しのぎの面談は全く意味がありません。このような問いかけはチームメンバーに対して、上司自らが「チームメンバーの現状を把握していない」ということを吐露している他なく、部下との信頼関係も破綻させています。

アップワードフィードバックのメリット

アップワードフィードバックのメリットは、組織の生産性向上・業務効率化に加え、管理職として傾聴力の向上、また企業として社員の不満を把握し、改善につなげることが挙げられます。

組織の生産性向上・業務効率化

組織全体の生産性を妨げている要因として、上司の存在が挙げられます。仕事の進め方や考え方(行動)、スケジューリングなど管理職中心にチームメンバーを振り回している事例も少なくありません。管理職はチームメンバーひとり一人のパフォーマンスを最大化することがミッションです。そのため、「何を優先し、何をやめるべきか」を常に考え、チームが成果を出しやすい環境を構築するために、意思決定権を有効に使わなければなりません。

しかし、自分が行っている業務自体が本当にチームのために貢献しているかどうかはチームメンバーのフィードバックが欠かせません。定期的にチームメンバーから管理職としての管理能力や組織運営力を評価してもらうことで、管理職自身がチームに対する役割を認識する機会となります。このようにアップワードフィードバックの繰り返しが、結果的に組織の生産性向上や業務効率化へとつながっていきます。

傾聴力の向上

効果が高い人材育成施策である1on1ミーティングや部下のコーチングは上司である管理職の傾聴力が欠かせません。好き嫌いや先入観などの管理職の主観で行うマネジメントでは、コーチングは不可能です。話しやすい雰囲気の中で、指摘や指導ではなく、相手の考え方や課題、悩みをさまざまな視点から話を掘り下げ、相手の話に耳を傾けることが大切です。

アップワードフィードバックでは、定期的にチームメンバーのチームに関する考え方や業務の進め方、場合によっては直属の上司に対する批判も知ることができます。その結果、チームメンバーと面談する際にアップワードフィードバックで得た情報を基にチームメンバーの考えや課題、悩みを先回りして、ヒアリングできる管理職の傾聴力の育成につながります。

社員の不満を把握できる

従業員が企業や仕事に満足しているかどうか(従業員満足度)は、企業や組織が成長するための不可欠な要素です。従来、チームメンバーの状況や評価は上司である管理職からの報告に終始していましたが、上司によるフィルタリングや不満を敢えて表に出さない社員の存在により、現場社員の本音が見えないことがあります。アップワードフィードバックは評価される管理職の人事考課にも影響を与えず(人事評価と切り離すことが効果的)、また匿名のフィードバックにより評価するチームメンバーの心理的負担をなくせるため、社員のホンネ(ホンネ)を抽出しやすくなります。

アップワードフィードバックの実施方法

アップワードフィードバックの実施は、管理職や現場の社員だけでなく、経営層や人事部が主体となって、取り組まなければなりません。今回はアップワードフィードバック自体が失敗しないための適切な実施方法をご紹介します。

現場の社員に理解を得る

アップワードフィードバックはチームメンバー(部下)から管理職に対しての評価であるため、通常の評価面談やフィードバックなどの加えて、新たな評価機会(アンケートの入力など)を設けることになります。そのため、管理職やチームメンバーがアップワードフィードバックを実施することで、「業務上、どんな利益があるか」を経営幹部や人事部が主体となって、啓蒙しなければなりません。評価対象となる管理職自身も経営幹部に対して、アップワードフィードバックを行う体制を構築することで、評価される側の管理職の理解を得やすくなります。

業務時間内で行う

アップワードフィードバックに限らず、すべての会議や面談は業務時間内で行わなければ、管理職もチームメンバーも本気で向き合い、信頼関係の構築ができません。しかし、現状の業務量や評価制度(業績評価)を変えなくては、アップワードフィードバックを業務のひとつとして取り入れることは難しく、かえって人事部や制度自体に不満が集中し、制度の導入自体が失敗する恐れがあります。このような事態を回避するためにも、経営層や人事部が「アップワードフィードバックを実施するためには、何をやめるべきか」を管理職とともに考え、実行していく必要があります。

アップワードフィードバックに最適な手法

アップワードフィードバックは数多くいるチームメンバーから情報を収集しなければなりません。今回は現場の負担を軽減しながら、アップワードフィードバックを実施するための最適な手法をご紹介いたします。

多面評価(360度評価)制度

多面評価(360度評価)制度とは、上司・同僚・部下など異なる関係性の従業員を評価者として、対象者の実態を多面的に評価する手法です。管理職の上司にあたる経営幹部が自分の視点以外で管理職を評価することにも長けています。また、多面評価(360度評価)制度は管理職の部下であるチームメンバーも評価者となるため、経営幹部から管理職を評価するための情報と、管理職へのアップワードフィードバックを同時に行える有効な手法です。

従業員満足度アンケート

従業員満足度アンケートは多面評価(360度評価)制度と比べて、簡単に実施でき、会社や人間関係といった従業員満足度の情報収集に役立ちます。一方で、組織内の課題や問題点を浮き彫りにすることができ、その結果を管理職や監督者にフィードバックし、現場の改善や管理職自身が自分のマネジメントを振り返り、成長を実感できる機会にもつながります。匿名での実施もしやすく、職場の人間関係にも悪影響を与えにくいメリットもあります。また、上司のマネジメントのほかにも労働環境やコミュニケーション、組織風土、仕事内容など多面的な情報も得られるため、改善策を見つけやすく、アップワードフィードバックの精度を高めることにもつながります。

パルスサーベイ

パルスサーベイとは、高い頻度で従業員への調査を行う手法で、従業員満足度をリアルタイムで把握し、フィードバックを可能とします。調査自体は簡易的かつ具体的な項目を中心に行われ、フィードバックの対象者はすぐに軌道修正を図り、迅速な改善を打ち出すことができます。調査自体は外部委託も可能であり、近年ではITツールを利用して、導入費用や運用費を抑えた上で実施でき、評価者の入力負担も軽減できます。パルスサーベイはアップワードフィードバックにも活用できるため、管理職はリアルタイムで最適な組織運営を行えます。

まとめ

アップワードフィードバックは管理職のマネジメント力やコーチングに必要な傾聴力を高め、結果的に組織の生産性向上や業務効率化につながります。しかし、制度の導入自体が目的化し、失敗しないためにも経営者や人事部が主体となり、現場まで入り込み、管理職や評価者であるチームメンバーの理解を得ることが大切です。

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