非常に挑戦的なタイトルではありますが、今回、私がこの書籍を執筆させていただくこととなった経緯と内容について、簡単にご紹介させていただきます。
ホワイト企業化が日本の衰退を招く
2019年4月から順次施行されている働き方改革。
大企業には、2019年4月に時間外労働(残業)の上限規制、2020年4月には正社員と非正規社員の不合理な格差を解消するための同一労働同一賃金の施行されました。
しかし、この働き方改革は本当の意味で労働者を守るための法案となっているでしょうか。
「帰れ」「休め」と催促するだけの働き方改革は、不確実性の高い世の中を生き抜く上で重要なサバイバル力を身につける機会を奪っているのではないでしょうか。
マニュアル主義がもたらす思考停止、「ラクができる」という誤った認識のワーク・ライフ・バランス、最先端のコミュニケーションツール・管理システムが先行した血の通わない人間関係。
このような超効率化を目指すホワイト企業では、自ら考え苦境を乗り越えていく自発的な人材を輩出する機会を放棄しているといえます。
つまり、ホワイト企業は、システムや仕組みを強化し、人材育成を置き去りにすることで利益を生み出す仕組みなのです。
本書では、誤ったホワイト企業化が成果を出したい人材や成長したい人材の未来・可能性を潰していくのではないかと警鐘を鳴らしています。
”ヒトの成長に責任を持たない”企業は、真の意味でホワイト企業ではなく、むしろブラック企業といえます。
日本政府が掲げる「一億総活躍社会」における働き方改革。
本書では、今の働き方改革は「一億総社長時代」の前兆と呼んでいます。
日本が厳しい国際社会の競争で生き残るために必要なことは、働き方改革による”形だけのホワイト企業化”ではなく、「本当の意味でサバイバル力を身につけるためのグッドブラック企業を推奨すること」と本書は考えています。
本書では、なぜホワイト企業では世界と戦えないのか、ホワイト企業こそブラック化してしまうメカニズム、「叱らない」・「副業OK」を掲げるホワイト企業の問題点など顕在化しにくい問題点を詳しく解説しています。
「バカはブラック企業に入りなさい」という真意
本書は、パワハラや長時間労働に厳しい目が向けられる時代において、挑戦的かつ誤解を招きやすいタイトルです。
しかし、このタイトルには、これからの時代を生き抜く若い世代の方やこれまでに一生懸命に努力を積み重ねてきたビジネスマンへの敬意と激励を込めています。
成長バカこそ時代に求められる優秀な人材
本書のタイトルに含まれている「バカ」とは、学歴や経歴がない人を指しているのではありません。
「終身雇用で就職し、事なかれ主義で仕事人生を終えたくない」
「これからの時代を生き抜くために、真のサバイバル力をつけたい」
「いつまでも情熱を持って、活躍し続けたい」
そんな熱い想いを持った、成長したい人を「成長バカ」という敬意を表して、命名しました。
成果や実績ある優秀な人材は、どこかのタイミングで必ずと言っていいほど自分自身に高い負荷をかけ、それこそブラックな働き方を実践してきたといえます。
では、限られた時間の中で最大のパフォーマンスを発揮し、しっかりと実績をあげる人材は最初からそのような人材だったのでしょうか。
確かにそのような人材もいることは否定しませんが、ほとんどの人は仕事の質を高めるためには量をこなすことが不可欠といえます。
だからこそ、成長したい人は自分の成長を加速させる環境が多い(グッドブラック)企業に入るべきと考えています。
グッドブラック企業とバッドブラック企業の違い
本書では、ブラック企業を2種類にわけて考察しています。1つはグッドブラック企業で、もう1つはバッドブラック企業です。
過度な長時間労働と課題改善の体制の不備のために起きた「電通社員の悲劇」や、パワハラまがいの人間関係が蔓延した「三菱電機社員の悲劇」。
これらの事件は決して許されるべきことではありません。
血の通っていない人格否定まがいの教育をするような企業は、日本社会からすぐにでもなくなるべきです。
本書では、こうした「人を使い捨てる」企業をバッドブラック企業と呼んでいます。
では、グッドブラック企業とはどんな企業か?
グッドブラック企業とは、上司の主観だけで実施することがない公平公正な評価制度と人材を教育する環境を持ち、形式だけではなくきちんと職場内でコミュニケーションをする企業と定義しています。
本書では、グッドブラック企業の事例やバッドブラック企業の見極め方も含めて、なぜグッドブラック企業で働くべきかということを解説しています。
グッドブラック企業こそ優秀な人材を育てる
本書は、市場価値の高い人材になりたい、成長したい人にグッドブラック企業への就職や転職を勧めています。
グッドブラック企業は、仕事は厳しくても「人を育てることを前提にしている」企業です。そのため、グッドブラック企業で働く人たちは、一般的にみればブラックな働き方をしているにも関わらず、どこか楽しそうであり、その後も活躍している人材が多いといえます。
万が一、勤めているグッドブラック企業が傾いたとしても、そこで力をつけた人材は労働市場ではとても価値の高い人材となります。
現在はホワイト企業の時代ですから、その希少性からもグッドブラック企業で鍛え上げた人材の市場価値は上がり続けています。
本書では、なぜグッドブラック企業だとサバイバル力を身に着けることができるのか、これからの時代に年功序列型・メンバーシップ型の働き方をうまく機能させる会社のあり方なども解説しています。
働き方改革とAIによる省人化時代を生き残るためは
本書は「ラクして仕事をしたい」、「無理して成長したくない」と考えている方には向いていません。
それも生き方のひとつであり、本書ではその生き方を否定しているわけではありません。
しかし、AIやロボットが台頭する省人化時代、つまり、企業が最低限の人数だけ労働者を雇用すれば経済活動を継続することができる時代は、あなたが望んでも望まなくても関係なく、必ず訪れる”時代の波”です。
形だけの働き改革では決して人を成長させることはできません。
新型コロナウイルスによるパンデミックで導入が一気に進んだ在宅勤務(テレワーク)は基本的に結果・成果主義が前提です。
最近の論評では、在宅勤務に関する効果が注目されています。
「上司の管理業務は果たして必要なのか」
「ITリテラシーが低い中高年は本当に会社に必要なのか」
「在宅勤務は”さぼる人が出てくる”というが、では”出社していた時”はさぼっていなかったのか」
「在宅勤務は強い自制心がいる」
「WEB会議の方が充実した会議だった」
これらの意見はほんの一部です。
AIやロボットなどを活用し省人化を目指す企業ほど、こうした在宅勤務(テレワーク)や成果のみで評価する個人事業主(フリーランス)の雇用をどんどん導入していくことでしょう。
そういった環境では、会社から提供される教育機会は必ず減少していきます。
つまり、これからの時代は、自ら成長していくことができる人材だけが生き残ることができるのです。
本来、働き方改革は決して「ラクをする」ためのものではなく、自発的に行動し成長できる人とそうでない人との間に、驚くほどの格差を生み出す過酷な施策なのです。
まさに、「超格差社会」の前ぶれともいうべき施策なのです。
成長に貪欲な人に読んでいただきたい
本書は、残念ながら、成長したくない人には価値のない書籍といえます。
しかし、「ホワイト企業に入ってみたけどモヤモヤ感が拭えない」、「自分の人生はこのままでいいのか」、「逆境の中でも結果を出せるサバイバル力を身につけたい」という方には、必ずお役に立てる書籍と自負しております。
また、「成長したいけど、人を使い捨てるようなブラック企業には入りたくない」という方にもおすすめです。
本書は「人の成長に責任を持つ」グッドブラック企業と「人を使い捨てる」バッドブラック企業の見極め方も紹介しています。成長を求めて、転職を考えている方にも有意義な内容となっています。ぜひ興味を持っていただけましたら、一度、手に取っていただけると幸いです。
2020年3月28日、徳間書店様から新刊『バカはブラック企業に入りなさい』が発売されました。