人事制度の構築は会社を倒産から救う!?

「私の会社ではまだ人事制度は必要ない。それよりも売上拡大、利益率アップだ!」と考えている中小企業経営者も多いと思います。
しかし、もし「人事制度の構築が会社を倒産から救う」と聞けば、その考え方は変わりますか?

本当に人事制度の構築と倒産は関係あるんでしょうか?

中小企業が倒産してしまう意外な理由とは

会社、特に中小企業が倒産する理由で最も多いのが「資金繰りの悪化」です。
では、なぜ資金繰りが悪化したのでしょうか?

  • 借入過多
    過大な設備投資で借入金が増え、売上も思うように上がらず資金繰りが悪化。
  • 取引先の倒産
    主力取引先が倒産し売掛金が回収できなくなったため、資金繰りが悪化。
  • 取引減少
    海外企業との価格競争に敗れ取引が減少したため、資金繰りが悪化

上記のような理由で資金繰りが悪化、最終的に倒産してしまったという話は中小企業経営者であれば何度も聞いたことがあるはずです。
また、最近では業績は好調であるにも関わらず、「人手不足」が原因で倒産に至ってしまったという、諦めても諦めきれない現象も起きているようです。

しかしもう一つ、中小企業だからこその理由で会社が倒産してしまうケースがあるのです。
それは一体なんでしょうか?

キーマンの退職

たった一人の社員が退職したために、会社が倒産してしまうことがあるのです。
確かに少数精鋭の中小企業において、社員一人一人の重要性は言うまでもありません。
しかし、本当にそんな話があるんでしょうか?

キーマンの退職に伴う生々しい話

多くの中小企業では、いわゆる「ベテラン社員」、「キーマン」がいらっしゃると思います。

  • ベテラン職人
  • ベテラン経理マン
  • ベテラン営業マン

役割はさまざまですが、場合によっては社長以上に会社の業務に精通しているケースもあるでしょう。
特に代替わりした二代目社長が率いる会社では、その影響力は測りしれません。

例えば、ここに一人のベテラン経理部長がいらっしゃったとします。
この方は部品の仕入れも担当しており、長年の取引から調達先のベテラン部長とも非常に良好な関係を築いているおかげで、特別価格で部品を仕入れることができていました。
その結果、会社は高い利益率を確保し、他社の追随を許さない経営を実現できていたわけです。

大企業同士の取引においては、「会社」対「会社」という面が強く、いわゆる「人間関係」が取引価格に影響することはあまりありません。
一方、中小企業同士の取引においては、「会社」対「会社」よりも「人間」対「人間」という関係性が、時には取引価格にも影響するということはあり得る話なのです。

このような状況の中、もし何らかの理由でベテラン経理部長が会社を退職し、さらに同業他社に転職した場合この会社はどうなるでしょうか?

結果はこの会社の利益率は下がり、ベテラン経理部長が転職した会社の利益率が上がることになるでしょう。
そして最悪の場合、利益率の下がった会社は倒産するかもしれないのです。

また、キーマンの退職は会社の実業務に影響するだけでなく、とかく「風評」に発展するケースも散見されます。
先ほどのベテラン経理部長の退職を例にすると、このような風評が予想されます。

「経理部長はその役割上、会社のお金の流れをすべて把握しているはずである。
つまり売上や原価、在庫に至るまで全てを把握している人間が会社を去るということは、あの会社内で何かが起こっている。
経理部長はそれを見越して早々に自ら退散したのではないか?」

このような風評が流れた場合、この会社の信用力は低下し、ますます倒産リスクが高くなってしまうわけです。

いかがでしょうか?
たった一人の社員が退職したことによって会社が倒産の危機に見舞われる様子をご理解いただけたと思います。
実際に大手商社の審査部では「キーマンの退職」や「経理部長の退職」といった事象を「取引リスク」の一つとして扱っており、取引条件を厳しくしたり、支払いサイトの短縮などの措置を講じるケースもあるのです。

倒産という最悪のケースには至らなくとも、一人の社員の退職が会社の経営環境に大きな影響を与える可能性があるということは、中小企業経営者として理解しておく必要があるのではないでしょうか。

人事制度を構築して社員の不満を察知

ベテラン社員に限らず、社員が退職する理由の多くは「人間関係」や「会社に対する不満」です。
そして、これらの理由は瞬間的に発生し、一気に退職へと進んでいくわけではありません。
人それぞれに「潜伏期間」があり、それを過ぎると「退職」という決断に至るのです。

従って、不満や悩みといった要因が潜伏している間に発見し、その要因を取り除く努力を会社としては行わなければなりません。

そのために必要なのが「人事部」であり、「人事制度」なのです。

まとめ

中小企業経営者が「人事部をつくらない」、「人事制度を構築しない」理由の一つとして挙げられるのが、「人事は売上に貢献しない」という考え方です。
確かに、人事制度が直接売上に貢献することはありません。
売上に最も貢献するのは人です。
しかし、会社において人が安心・納得して仕事に打ち込めるような環境を整備することが人事部、人事制度の一番大切な役割である以上、「人事も売上に貢献する」という考え方が必要なのではないでしょうか。

なお、下記記事では人事部をつくる具体的なメリットを書き出しております。
ぜひご参考にしてください。

人事コンサルタント 大橋高広 公式ホームページ

人事で損する『企業』と『人』をなくしたい

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大橋 高広
株式会社NCコンサルティング 代表取締役社長|人事コンサルタント・研修講師|東洋経済オンライン記事投稿・日本経済新聞での書籍紹介│新刊『リーダーシップがなくてもできる職場の問題30の解決法』(日本実業出版社)Amazonランキング「マネジメント・人材管理」6位│その他著書『バカはブラック企業に入りなさい』(徳間書店)、『人事部のつくり方』(主婦の友社)│人事制度の設計と運用・管理職研修・職場改善研修・新卒研修・若手社員研修など「人事評価制度の設計と運営」を軸に、「組織文化形成・管理職育成・職場改善」など人事全般に関するサポートを提供