今回は人事評価制度を適切に構築・運用するための方法をお話したいと思います。
\1on1面談のやり方が掲載された全13ページの研修資料付/
なぜ、社内がギスギスしてしまったのか?
答えはとてもシンプルです。
「社員が望んでいる人事評価制度ではないから」
あなたは人事評価制度を導入するにあたり、次のような取り組みを実施しませんでしたか?
- セミナーや書籍などで勉強して自社で制度を構築
- 社会保険労務士を利用して助成金で制度を構築
- IT会社の人事評価制度システムを導入
- 一般的なコンサルティング会社に依頼して制度を構築
いずれの取り組みも決して否定するつもりはありませんが、往々にしてあることは「経営視点」で制度を構築してしまっていることです。
つまり、現場の社員から見れば、「上から降りてきたモノ」、「社長が何か面倒くさいことを始めたよ」ということになってしまっているのです。
これでは、うまくいくはずがありません。運用以前に、構築段階に問題があった可能性が高いのです。
経営視点から現場視点へ
そもそも社員は「人事評価制度」なるものを望んでいるのでしょうか?
失礼を承知で申し上げるならば、「何となくゆるい雰囲気」の方が居心地が良いと考えていないでしょうか?
つまり、現場で働く社員が「評価」というものに対して、どのようのに考えているのかを把握することが、「人事評価制度」の成否を決めるポイントだということです。
これが、現場視点なのです。
人事評価制度の導入に異を唱える社員もいるかもしれません。
しかし、社長であるあなたが、会社の更なる成長には人事制度、人事評価制度の構築・運用が不可欠だと判断したのであれば、その理由・意義を社員に説明する必要があるでしょう。
このような手順を踏まずして構築した人事評価制度は「絵に描いた餅」、あるいは「厄介なモノ」になってしまうのです。
従って、会社、特に少数精鋭の中小企業においては、現場の社員の声を人事施策に反映させることで、社員の満足感や納得感を向上させていく必要があるのです。
現場の声を正しく理解するために
中小企業の社長の中には「現場の声を理解する」ということに関して、少し勘違いをされている方がいらっしゃいます。
中小企業では社長と社員との距離が近く、毎週飲みに行っていることもあると思います。
いわゆる「飲みニケーション」です。
しかし、ここに錯覚があるのです。
つまり、「飲みニケーション」=「現場の声を理解する」という考えが社長の頭の中にあるのです。
いくら無礼講だと言っても、飲みニケーションで社員のホンネを聞き出し、理解することはできません。
自身が部下という逆の立場に置き換えていただければ、無礼講の飲み会でもホンネを言えないことは、容易に想像ができるかと思います。
では、どのようにして現場の声を理解するのか?
答えは、お互いに仕事として、業務として「コミュニケーション」を取ることなのです。
「仕事として」のポイントは次の通りです。
- 業務時間中に行う(やむを得ず業務時間外になる場合は時間外手当を支払う)
- 秘密を厳守する。そのためには面談場所にも配慮する
- 社長ではなく、人事部長が行う
このように、まず行わなければならないことは、現場の声を聞き、社員の現状を把握することなのです。
その結果を持って、人事評価制度の構築をすべきなのです。
この順序は決して間違えないでください。
なお、「現場の声を聞く」、「人事評価制度の構築」については、次の記事に具体的な方法を記載していますので、よろしければご参考にしてください。
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人事評価制度の運用段階で気を付けたいポイント3つ
評価される社員にとって、一番気になることは何でしょうか?
「良い評価を得たい!」と思うのはもちろんですが、それ以上に「公平に評価して欲しい!」ということではないでしょうか。
そのためのポイント3つをご紹介します。
評価者と被評価者
公平に評価するためには、「評価者」と「被評価者」を明確に決める必要があります。
大切なことは1人の被評価者に対して、複数の評価者を設定することです。
一次評価者、二次評価者などと呼んだりします。
複数の評価者を設定することで、公平な評価を担保するわけですが、その際、一次評価者は原則として同じ部署の管理職にしなければなりません。
当たり前のことではありますが、普段から自分の仕事ぶりを見ている人からの評価でないと、社員が公平感を持つことは決してありません。
さらに申し上げると、評価者との信頼関係が構築されていることも重要です。
なお、信頼関係が重要とは言っても、「ゴマすり」が好きな評価者や「ゴマすり」が得意な被評価者には注意して決めてください。
評価期間
評価期間とは、人事評価の対象となる期間のことですが、あらかじめ決めておいた期間以外の事実は評価対象にしないことが重要です。
例えば、これまでどちらかと言えば評価の低かった社員が、努力して成果を出したとしても、これまでのイメージが優先してしまい、正しい評価ができないケースがあるのです。
つまり、以前の評価期間の事実を評価対象にしていることになるのです。
これでは公平どころか、社員のモチベーションにも影響を与えてしまいます。
なお、評価期間は長いもので12ヶ月、短いもので1ヶ月や3ヶ月ですが、3月決算が多い日本では、「4月~9月」、「10月~3月」のように6ヶ月区切りというケースが多いようです。
期間が長ければ、年間、あるいは半期の業績と連動させやすいというメリットがある反面、会社を取り巻く状況に変化が起こった場合、期初に設定した目標との連動性に欠けるというデメリットもあります。
一方、期間が短ければ評価と処遇が短期間に何度も実施されるため、成果主義的な考え方を定着させたい場合にはメリットがあるでしょう。
反面、成果主義の副作用とも言うべきですが、短期的な評価に固執するあまり、経営理念、経営計画といった長期的な視点に欠けた行動を促す危険があります。
評価エラー
人事評価を行う際、評価者がやってしまいがちなエラーがあります。
人間の心理面に起因することから、評価時には意識しておくことが大切です。
いくつかの評価エラーをご紹介します。
- ハロー効果
「有名な学校を卒業している」、「取るのが難しい資格を持っている」といった事実が影響して、ついつい高い評価をしてしまうことを言います。 - 寛大化傾向
「自分の部下だから」、「評価することに不安がある」といった理由で、甘い評価になってしまうことがあります。 - 厳格化傾向
先ほどの寛大化傾向とは逆の考え方です。 - 中心化傾向
いわゆる「可もなく不可もなく」の評価が多くなってしまうことです。 - 期末効果
評価時期に近い事実が、いい意味でも悪い意味でも全体の評価期間に対する評価に影響を及ぼすことです。 - 相対比較
他の社員との比較で評価してしまうことです。
いずれのエラーについても、人事評価制度に基づき、客観的な事実についてのみ評価を行うことを常に意識することで対策できるのではないでしょうか
まとめ
人事評価は、そのまま社員の処遇に繋がる大切な仕事であり、社員の関心も非常に高いと言えます。
構築段階、そして運用段階それぞれに存在するポイントを踏まえ、会社に更なる成長に結びつけなければならないのです。
せっかくお金と時間を掛けて人事評価制度を構築したのに、「なかなか成果が実感できない」、逆に「以前よりも社内がギスギスしてしまった」という印象をお持ちの社長は意外と多いのではないでしょうか。