従業員意識調査は人事部づくりの実質的なスタートです。

人事部づくりに際して、中小企業経営者が起こしやすい間違いがあります。
それは、いきなり「人事制度」づくりに着手することです。

例えば製造業の場合、新製品を開発するために最初に行うことは何でしょうか?いきなり製品をつくり始めるでしょうか?
まずは、「今、お客様が望んでいることは何か?」「お客様は何に困っているのか?」「何に不満を持っているのか?」を調べることから始めるはずだと思います。

人事部づくりも全く同じことです。
「今、社員が望んでいることは何か?」「社員は何に困ってるのか?」「何に不満を持っているのか?」
これを知らずして人事部づくりはできないのです。

従業員意識調査の目的

従業員意識調査を行う目的は会社の中に潜む経営課題を明らかにするためです。
経営課題といっても、「設備が古い」、「利益率が低い」といったものではなく、「人的経営課題」を浮き彫りにするためです。
そして、人事部づくりとは、正にこの人的経営課題を解決するために行うことなのです。

具体的にお話していきましょう。

少数精鋭の中小企業において、社員のモチベーションアップは業績拡大に向けての最重要課題であるはずです。
一方、経営者の中には「うちの社員にはやる気があまり感じられない」「特に、最近の若い社員は・・・」と言った悩みを持つ方が多いのも事実です。

なぜ社員のモチベーションは上がらないのでしょうか?
その原因は、職場での人間関係など、職場環境に関することがほとんどなのです。

  • なぜ、こんなことまで要求されなければならないのか?
  • なぜ、怒鳴られるのか?
  • なぜ、きちんと教えてくれないのか?

このような疑問・不満を抱えつつ日々の仕事に取り組んでいる社員がいるのです。
しかし、疑問・不満はなかなか表には出てきません。いわゆる「飲みにケーション」では決して本音が明らかになることはないのです。

従業員意識調査とは、その名前の通り「社員の意識」に語りかけ、本音を引き出すものです。
社員が抱える本当の不満、これこそが会社が抱える人的経営課題なのです。

ここに、同期入社のA君とB君がいます。
A君は仕事が遅く、いつもB君がカバーをして何とか納期を守ることができています。
しかし、B君は「いつまで、カバーすればいいんだ!」、「いつまでこんなことを要求され続けるんだ?」といった疑問・不満を抱えるようになるのです。
B君はチームワークの重要性は理解しているため、表面上不満を言うことはありません。
黙々と仕事をしていきます。
しかし、いずれB君の不満は限界を超え、会社を去っていくのです。

結局、仕事ができるB君が会社を去り、仕事が遅いA君が会社に残るのです。

経営者として、このような状況をどう考えるでしょうか?

従業員意識調査の項目

それでは、従業員意識調査では具体的に何を確認しなければならないのでしょうか?
主な項目と確認ポイントを挙げてみます。

  • 役職・配置
    会社の規模に関わらず、いわゆる「出世レース」には社員の不満が付き物です。
    「なぜ、アイツの方が先に・・・」といった不満があるのであれば、どのような決定方法であれば良いのか、理想的な決定方法を確認する必要があるでしょう。
    また、人員配置についても潜在的な不満を抱えているケースが散見されます。
    例えば、中小企業においては少数精鋭であるが故に営業現場や製造現場に重点を置きがちですが、一方で内勤部門の社員はどのように考えているかを確認することも重要です。
  • 報酬
    賃金体系、賞与、諸手当について確認していきます。
    例えば、最近では賃金体系に「年功型」よりも「成果型」を重視する傾向がありますが、社員は今の賃金体系をどのように考えているのでしょうか?
    また諸手当についても、例えば家族手当が支給されない独身者はどう思っているのでしょうか。
    役職手当が少ないため、出世するよりも残業代が出る今の立場の方が良いと考えている社員はいないでしょうか。
  • 待遇
    福利厚生制度や退職金制度などに関することです。
    例えば、契約料を払って加入している外部の福利厚生サービスですが、社員は満足しているのでしょうか。
    慶弔休暇は妥当な日数でしょうか。それぞれ、理想的な福利厚生サービス、理想的な日数を確認しましょう。
  • 休日・休暇・残業
    有給休暇の取得率や残業時間削減は社会問題となっており、「働き方改革」として国も力を入れている分野です。
    社員は今の残業時間にどのような印象を持っているのでしょうか。
    また、本質的な問題としてなぜ残業が発生するのでしょうか。人件費管理の面からも社員の声は重要です。
  • 人材育成
    一昔前は「目で見て盗む」が通用していたかもしれませんが、今はそういう時代ではありません。
    例えば、今の社員はOJTに対してどのような感想を持っているのでしょうか。
    また、ただでさえ忙しい教える側の先輩社員は苦痛に感じてはいないでしょうか。
  • 人間関係・コミュニケーション
    今、人間関係で困っていることはないでしょうか、コミュニケーションは良好でしょうか。
    理想的な人間関係・コミュニケーションについてどう考えているのでしょうか。

いくつか項目を挙げていきましたが、「現状を確認する」、「理想形を確認する」とともに、確認したことに対して「なぜそう思うのか?考えるのか?」を把握することが重要になります。

「なぜ」と繰り返し聞くことにより、より相手の本音が見えてくるのです。

従業員意識調査はアンケートよりも面談形式

従業員意識調査はアンケートではなく、必ず面談形式で行ってください。理由は次の通りです。

  • 社員の本音は文章ではなく、言葉や声、表情に表れる。
  • 回答内容をさらに深堀するなど、臨機応変に対応することで、より本音を引き出すことができる。
  • 社員側においても、文章を書くよりも、聞かれたことに答える方がストレスなく対応できる。

また、従業員意識調査という性格上、面談場所がとても重要になります。
社内で確保することが難しい場合には社外で行うという選択肢も視野に入れてください。

まとめ

従業員意識調査は人事部づくりの実質的なスタートです。

しかし、意識というものは時間とともに変化していくものです。
例えば社員が結婚をして子供が生まれた場合、独身時代とは異なる不満を持ったとしても何ら不思議ではありません。
また会社が発展し、従業員が増えていけば新たな問題が発生することも考えられます。

つまり、従業員意識調査は1回実施すれば終わりではないのです。
社員や会社とともに人事部も変わっていかなければならないのです。

どのように人事部が変わっていけば良いのか、その答えは従業員意識調査によって明らかになるのではないでしょうか。

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大橋 高広
株式会社NCコンサルティング 代表取締役社長|人事コンサルタント・研修講師|東洋経済オンライン記事投稿・日本経済新聞での書籍紹介│新刊『リーダーシップがなくてもできる職場の問題30の解決法』(日本実業出版社)Amazonランキング「マネジメント・人材管理」6位│その他著書『バカはブラック企業に入りなさい』(徳間書店)、『人事部のつくり方』(主婦の友社)│人事制度の設計と運用・管理職研修・職場改善研修・新卒研修・若手社員研修など「人事評価制度の設計と運営」を軸に、「組織文化形成・管理職育成・職場改善」など人事全般に関するサポートを提供