近年、業界に関わらず、スタートアップ企業が増えており、事業拡大のため、人材の採用や管理職、プロジェクトマネージャー(PM)の需要が高まっています。
一方で、こうした事業推進をしてくれるプレイングマネージャーは貴重な存在で、スタートアップの中でも業務が集中する傾向にあります。
そのため、高待遇で迎えたとしても退職をしていくことがめずらしくありません。
今回は、スタートアップ企業における優秀な人材である管理職やプロジェクトマネージャーのマネジメントについて、解説します。
AIで業務を代替すると同時にコア人材の育成が不可欠です
管理職育成を同時に進めることが大切です
「人事制度の設計・運用」と「マネジメント研修」の専門家。株式会社NCコンサルティング(大阪府大阪市中央区南船場) 代表取締役社長。関西経済同友会 若手の会 幹事。
スタートアップ企業が陥りやすい"幹部社員"の高待遇

スタートアップ企業で執行役員や部長クラスを高待遇として迎えることはめずらしくありません。
同年代と比べて、圧倒的に高い年収を提示され、スタートアップ企業にジョインする高度人材は引くて数多ですが、プレッシャーや業務過多によって、退職していく事例も増えています。
スタートアップ企業では、事業を推進できる人材に業務が集中していく傾向がある一方、本人も実務で優秀な人材のため、業務を抱えがちです。
日々の業務に加えて、チームメンバーのマネジメント、採用、事業推進など一手に引き受けるケースも少なくありません。
そして、当然、いずれも疲れ果てて、退職へとつながっていきます。
さらにチームメンバーからこんな声も聞かれます。

◯◯執行役員、飲み会でご馳走してくれるのは嬉しいけど、すごい派手な飲み方をしてかなりストレスが溜まっていそう・・・

羽振りもいいし、年収がすごく高そうだけど、あんな状況になるなら、管理職になりたくないかも…
本人だけでなく、職場全体に対して、管理職やプロジェクトマネージャーに対するイメージが悪化してしまいます。
AIで業務を代替すると同時にコア人材の育成が不可欠です
管理職育成を同時に進めることが大切です
年収を積めば良いというわけではない【若手人材の価値観ミスマッチ】

「年収も高く、高待遇の管理職クラスを提示しているのに人材が集まらない」こうした声は多くのスタートアップで聞かれます。
では、こうした高度人材が退職してしまった場合、社内登用でそのポジションを埋めることができるか?
残念ながら、そう簡単ではありません。
高い年収や手厚い福利厚生を提示しても若手人材には響きにくくなっています。
その理由は以下に考えられます。
キャリアパスや将来像の不透明さ
役職の責任や裁量が不明確だと、「待遇は良いが何を求められるか分からない」という不安が先行します。
特に執行役員クラスでは「業績責任」「経営層との関わり方」「失敗時のリスク」が大きいため、応募をためらう傾向があります。
会社としてキャリアパスを提示できないため、「将来、この会社で出世してもどうなるかわからない」「自分の理想とする人生を歩めるかわからない」といった不安につながります。
現在の職種とのトレードオフ
現在のポジションで安定している社員は「高収入」と引き換えに激務や精神的負担の増加を懸念します。
「管理職になると現場業務から離れる」「残業や会議が増える」といったネガティブイメージも障害となりやすいと考えれます。
社内文化・人間関係への影響
管理職に昇格すると、元同僚との関係性が変わることに抵抗を感じる社員も多いと考えられます。
「上司になることで疎まれるのではないか」「板挟みになるのでは」という心理的負担も社内登用を難しくしている要因となります。
人事評価制度・登用プロセスへの不信感
「結局は上層部の指名で決まるのでは?」という 公正性への疑念があると、応募意欲が低下します。
選考基準や評価プロセスが不透明だと、「応募しても無駄」と感じさせてしまいます。
スタートアップ企業は、事業拡大や人員確保を優先して動く傾向が高く、その分、組織マネジメントに大切な人事評価制度や登用プロセスを見直すことを後回しにしがちです。
6. 福利厚生や給与以外の魅力不足
- 管理職になることで得られる「学び」「成長機会」「意思決定権限」など、非金銭的メリットが見えにくいと応募は集まりません。
AIで業務を代替すると同時にコア人材の育成が不可欠です
管理職育成を同時に進めることが大切です
スタートアップで優秀な人材が辞めないための施策

スタートアップ企業は採用に力を入れすぎてしまい、肝心な定着や社内育成といった対応を後回しにしがちです。
中でもキャリアパスやオンボーディング(上司教育)しなければ、誰もそのポジションにつきたがりません。
また、やめる人が続出して「育てる」、「定着」を考える人がいなくなると、どんどん組織は疲弊していきます。
優秀な管理職を育てるには「キャリアパス」が鍵
管理職やプロダクトマネージャーは「自分がこの会社でどんな未来を描けるか」を重視し、会社への帰属意識を高めていきます。
そのため、以下のポイントを意識して、キャリアパスを作成しましょう。
- 将来的にどんな役職や役割が期待されているのか
- どのようにスキルアップし、責任が拡大していくのか
キャリアパスを示さずに「自由に挑戦できる」だけを打ち出すと、逆に社員は不安を抱え、成長と定着を妨げてしまいます。
管理職の「オンボーディング」が欠かせない理由
一般社員から管理職へステップアップする際には、必要なスキルやマインドが大きく変わります。
昨今、プレイングマネージャーが増えており、マネジメントスキルを得ないまま、管理職になる事例も増えています。
- チームマネジメント
- 評価・育成の方法
- 経営層とのコミュニケーション
- 数字責任の持ち方
上記のスキルを体系的に学ばせる「オンボーディング(管理職育成プログラム)」がなければ、優秀な人材でも重積や業務過多、組織マネジメントの失敗による組織崩壊で立ち直れなくなります。
AIで業務を代替すると同時にコア人材の育成が不可欠です
管理職育成を同時に進めることが大切です
AIで効率化できてもプロジェクトを推進する人材の重要性

スタートアップにとって人材は 単なる業務を回すた目の人材ではなく、組織として成果を出していくための人材です。
AIは大量のデータ処理や分析、業務の自動化に優れていますが、「なぜそのプロジェクトを行うのか」「何を優先するか」を決める意思決定までは担えません。
方向性を示し、関係者を巻き込みながら推進することが管理職の役割です。
以下、管理職を採用・登用するためのポイントとして押さえておきましょう。
- 採用で人を集めるだけでなく、キャリアパスの提示で将来像を共有する
- 管理職を迎えたら、オンボーディングで早期に活躍できる環境を整える
この人事対策を徹底することで、採用コストを抑えつつ、持続的に成長する組織が実現します。
資金調達に成功して、事業拡大を目指すスタートアップ企業ですが、人員が増えるにあたり、組織の課題が浮き彫りになってきます。