事業承継を実現するための人事改革を
時代は「事業承継」から「人材承継」へ
「事業を承継する」だけの事業承継は時代遅れです。これからの時代、事業承継は「人材承継」の意味合いが強くなります。
従来の事業承継は、不動産や株式といった「目に見える資産」を中心に進められることが一般的でした。
しかし、現代においては、企業の成長を支えるのは、従業員が持つ技術力や知識、経験、そして組織文化といった「目に見えない資産」、すなわち「人的資本」です。
企業間競争が激化する現代において、「人的資本」をいかに次世代に継承していくかが、中小企業の未来を決めます。
人材承継の考え方
事業承継を検討する前に、まずは人材承継を重視し、人材承継の考え方を理解しましょう。
- 経営者の想いや価値観を後継者や従業員に共有する
- 経営理念や経営者の想いを伝承する
- 経営に対する想い、価値観、信条を再確認し、明文化する
事業承継を実現するためには、創業者をはじめとした経営者の想いや価値観を従業員に浸透させなければ、その後の事業継続が難しくなります。
創業者や経営者のワンマン経営で会社が継続できていたという状況は後継者やM&Aの買い手にとって、魅力的な企業として認識されず、価値が下がります。
そのため、事業承継では、事業を支える人事(人的資本)がどれだけ魅力的かが鍵となります。
頑固者や会話ができないスタッフばかりの会社は魅力的か?
近年、ビジネスの世界では「人的資本」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
従業員が持つ知識、スキル、経験、能力、ノウハウといった、企業の価値を生み出す源泉となるものを指します。
しかし、これらの人的資本も人事が機能していないようでは、魅力的な企業として認識されません。
あなたが後継者の場合、頑固者や会話ができないスタッフばかりの会社を引き継ぎたいと思いますか?
中小企業の多くが事業承継できない理由は後継者不足と言われています。
しかし、後継者がいないのではなく、上記の質問が後継者が見つからない本質的な原因と考えられます。
現代のように変化の激しい時代においては、従業員一人ひとりの能力や熱意、そして組織全体の連携や協力は、企業の競争力を左右する重要な要素です。
しかし、後継者である新社長と満足にコミュニケーションが取れない従業員がいる会社は、どれだけ有能な経営者でも会社を存続することは難しいと言えます。
経済産業省が発表した、人材版伊藤レポート2.0では非財務情報の中核に位置する「人的資本」が、実際の経営でも課題としての重みを増してきていると提言しています。
企業は、従業員を「コスト」ではなく、「価値を生み出す資本」と捉え、その育成に積極的に取り組むことが求められています。
「人材承継」で実現する、持続可能な会社こそ企業価値が高い
事業承継を成功させるためには、事業内容や財務状況だけでなく、「人材承継」を取り入れることが不可欠です。
優秀な人材を採用し、育成し、定着させることで、組織全体の能力を高め、持続可能な成長を実現しようという考え方です。
※具体的に従業員のスキルアップやキャリアアップを支援する制度の導入、働きがいのある職場環境の整備、企業理念やビジョンを共有するなど、多岐にわたる取り組みが必要となります。
人材承継を行うことで、後継者は、先代経営者が築き上げてきたノウハウや技術、顧客との信頼関係などを引き継ぎ、迅速に経営を引き継ぐことが可能となります。
簡潔に申し上げると、人事改革をやらないと企業価値が低くなります。
そのためには、次世代の従業員が成長できる最適な人事制度の立案や人事改革が必要不可欠です。
将来を担う若手人材やベテラン社員にとって、将来のキャリアパスが明確になる人事改革は、モチベーション向上や定着率向上に繋がり、結果的に企業の成長へと繋がっていきます。
事業承継を実現するための人事改革を
企業価値を高める人事改革とは
企業価値を高める人事改革は、3つのステップで具体化し、実行していきます
事業承継を見据えた人事改革を行うには、まず、経営者自身が「いつまでに、誰に、どのように事業を承継したいのか」というビジョンを明確にすることが大切です。
「人事」の実態を把握する(現状分析)
現状分析では、まず、自社の「人事」の実態を客観的に把握することが大切です。
以下の項目を参考に、自社の課題や問題点を洗い出してみましょう。
- 組織構成:年齢構成、役職、部署ごとの人員配置などを分析し、組織全体のバランスや偏りなどを把握する
- 人材のスキル・能力:社員一人ひとりのスキルや能力、経験、資格などを可視化し、会社の強みや弱みを分析します。人事評価制度を活用することで、より客観的なデータを得る
- 教育体制:管理職研修や新入社員研修、スキルアップ研修など既存の教育体制の内容や実施頻度、効果などを評価する
- 評価・報酬制度:評価制度の透明性や公平性、報酬水準の妥当性などを検証する
※社員の意見を収集し、課題や改善点を見出す - 組織文化:社員意識調査などを実施し、組織文化や風土、コミュニケーション状況などを把握します。
人事課題の解決において、最も大切なポイントが管理職育成です。人材を育てる役割を担う中間管理職を育成することが企業価値の向上に直結します。
どんな「人材」を育成するのか明確にする
事業承継に相応しい企業は、後継者をはじめ、会社を支え、成長を牽引していく人材が必要です。
人事改革ではでは、自社のビジョンや事業計画に基づき、5年後、10年後、そしてその先に、どのような人材が必要となるのかを具体的に定義します。
目指す会社の方向性を明確にすることで、人材育成の方向性も定まります。
次世代人材を育てるための人材育成計画の立案
目標とする人材像を明確にしたら、具体的な人材育成計画を策定します。
従業員一人ひとりの成長を支援する計画を立てることが重要です。
人材育成計画には、以下の内容が含まれます。
- 研修の実施:管理職研修や新人研修、経営幹部育成プログラムなどを実施し、必要な知識やスキルの習得(外部研修機関の活用も有効)
- メンター制度:(人事評価に人材育成を盛り込んだ)経験豊富な先輩社員が、後輩社員の育成にあたる
- 資格取得支援:業務に必要な資格取得を支援することで、社員のスキルアップを促進
- 自己啓発支援:書籍購入やセミナー参加などの費用を補助し、社員の自主的な学習を促進
中でも管理職研修の充実、社員育成を人事評価に盛り込むことが大切です。
人事評価制度の重要性
先にご紹介したように、事業承継されない企業には、頑固者や会話ができないスタッフが多い傾向があります。
こうした人材がいる会社は従業員間の技術承継もうまくいかず、いずれ事業に支障をきたします。
特に中小企業には、頑固者や会話ができないなどの特徴を持つベテラン社員が多いと言えます。
このようなベテラン社員に企業の後継者や次世代への技術承継をしてもらうためには、「教育も人事評価に盛り込む」という人事評価制度が必要です。
また、後継者を支える社員のモチベーションを高めるためには、人事評価制度の透明性を確保することも大切です。
評価基準やプロセスを明確化し、社員が納得できる評価を実施することで、社員のエンゲージメントを高め、定着率向上に繋げることが可能となります。
事業承継を実現するための人事改革を
大橋高広の人事コンサルティングについて
大橋高広の人事コンサルティングは、中小企業を対象とした管理職育成や人事評価制度の立案に強みを持ちます。
「人事を蔑ろにする企業は必ず衰退する」
多くの会社の問題は人事にまつわるものが多いと言えます。
事業承継だけでなく、中小企業が持続可能な成長を遂げるためには、人事による職場改善が必要です。
会社の問題について、お悩みの方はぜひお気軽にお問い合わせください。
人手不足倒産や黒字倒産、そして後継者不在のために倒産など事業承継がうまくいかない中小企業が増えていますが、その主たる原因をご存知でしょうか。