「空気を読める人=仕事ができる」という時代は終わりました。
社員を「問題」にしているのは、ルールを明文化しない会社の責任です。
今回は、世代間のギャップを乗り越え、離職を防ぎ、生産性を高めるための「職場のルール」づくりの重要性を解説します。
採用・人材定着における労働環境の改善
「人事制度の設計・運用」と「マネジメント研修」の専門家。株式会社NCコンサルティング(大阪府大阪市中央区南船場) 代表取締役社長。関西経済同友会 若手の会 幹事。
「空気を読める人=仕事ができる」は限界

近年、「問題社員」と呼ばれる人々への対応に頭を悩ませる企業が増えています。
かつての日本型組織では、阿吽の呼吸で業務を遂行することが美徳とされました。
しかし、現代の組織でそれが機能しないのには明確な理由があります。
- 世代間のギャップの拡大:価値観や仕事へのモチベーションが大きく異なる若手・ベテランの間で、「言わなくても分かる」は通用しません。育ってきたカルチャーが違うため、解釈のズレが必ず生じます。
- 組織の多様化(ダイバーシティ):中小企業でも、外国籍の方や中途採用者の比率が増えています。彼らにとって、日本の「暗黙のルール」はただの障壁です。「空気を読め」は、実質的に「排除」と同じ意味になりかねません。
- 属人化によるリスクの増大:「空気を読める人」に頼りすぎると、できる人に業務とノウハウが集中し、できる人が休職・退職した時に、組織全体が機能不全に陥ります。これは、事業継続における致命的なリスクとなります。
「空気を読めない」社員は、単に「会社が何を求めているかわからない」状態にいるだけの可能性が考えられます。
期待値や評価基準が曖昧なまま、「頑張れ」や「察して」と指示を出すことは、経営者や管理職の責任放棄といえます。
その結果、社員はどの方向に努力すれば正解なのかわからず、結果的に生産性が低下し、離職率が上昇します。
本当に問題なのは、社員の能力ではなく、組織の仕組みが旧態依然としていることです。
採用・人材定着における労働環境の改善
問題社員を問題社員にしているのはルールがないから

もし、問題社員を「空気が読めない」「察しが悪い」と切り捨てているなら、それは時代錯誤なマネジメントと言えます。
しかし、問題社員は初めから問題社員ではなく、ルールがないから「問題」を起こしていると考えられます。
かつて、日本では「空気を読む」ことが仕事ができる人の証とされました。
しかし、価値観が多様化し、国籍や経歴、世代が異なるメンバーで構成される現代の職場において、この「暗黙の了解」に依存したマネジメントはもはや限界を迎えています。
特に、若い世代やバックグラウンドの違いから「言葉が通じない」、「カルチャーが違う」状況下で、「察しろ」「行間を読め」と求めること自体がそもそも無理な話です。
だから、中小企業こそ「ルールを明文化する」ことが大切です。
そのため、「空気を読めない人=問題社員」とレッテルを貼ってしまう企業(経営者や管理職)は、そもそも「ルールを明文化していない」ことがほとんどです。
経営者や管理職は、まず「若年世代との価値観や文化が異なる」ということを認識することが大切です。
採用・人材定着における労働環境の改善
ルールを明文化こそが人材定着につながる

精神論や根性論から脱却し、人材の定着につなげるためには、組織の「ルール」と「仕組み」で解決するしかありません。
ルールの明文化には、人事評価制度の導入、オンボーディングメソッドの構築、そして連絡手段のルール化などが挙げられます。
人事評価制度の導入
人事評価制度の導入は、単に給与を決めるための仕組みではありません。
人事評価制度は、曖昧だった「空気を読む」文化を、誰もが納得できる「ルール」に基づいた文化に変革できます。
- 目標の明確化 (MBO/OKR)で、会社が社員に何を期待しているのかを明確にする
- 職種や等級ごとに必要なスキルやコンピテンシー(行動特性)を定義する
※察してもらうのではなく、明文化する - 評価基準を透明化して、「なぜその評価になったのか」が理解できるようにする
- 理由のある」評価で、感覚ではなく、明文化された基準と具体的な事実に基づいて評価する
オンボーディングメソッドの導入
問題社員は、入社時点から問題を抱えていたわけではありません。
多くは、入社後の「放置」と「不明瞭なルール」によって、会社の求める行動基準から外れてしまった結果といえます。
オンボーディング(OJTを含む新入社員の受け入れ・定着プロセス)は、この問題を解決し、すべての社員を即戦力化するための「教育ルール」を明文化することに効果的です。
- カルチャーとマナーの可視化:会社の価値観、部署ごとの連絡手段(メールかチャットか)、会議での発言ルールなど、これまで「空気」で処理されてきた非言語的なルールを明文化し、研修で伝えられる
- 初期期待値の統一:新入社員が「1ヶ月後までに何を達成すれば良いか」「3ヶ月後までにどのスキルを習得すべきか」という初期段階の評価基準を明確にできる
連絡手段もルール化対象
「空気を読めない」社員が生まれる原因のひとつに、コミュニケーションにおける「暗黙のルール」があります。
連絡手段をルール化することは、日常的な「小さな摩擦」をなくし、「問題社員」が生まれる職場を防ぐことができます。
- 電話/内線:「緊急性の高い、1時間以内に対応が必要な要件」に限定する
- 社内チャット:「即座ではないが、当日中の確認と返信が必要な要件」に利用する
- メール:「記録が必要な正式な要件や、返信が翌日以降で良い要件」に利用する
- 報告のフォーマット:報告・相談の際には、「結論」「現状」「課題」「提案」の順で記述するといった、伝達フォーマットをマニュアル化します
- 宛先の明確化:「この種類の相談は誰に」「承認は誰から取るか」というフローを明確にします
- 決定事項の記録場所:重要な決定事項や指示は、必ずメールや共有文書など、「エビデンスが残る手段」で最終確認を行うことを義務付けます
- 公私の分離:プライベートな連絡手段(個人のLINEなど)を一切業務で使わないルールを徹底し、公私の境界線を明確に保ちます
採用・人材定着における労働環境の改善
世代間で文化や価値観に違いがあることを受け入れる

かつて通用した「空気を読む」マネジメントが限界を迎えたのは、社員の働く目的や仕事への価値観が、世代や背景によって大きく異なっているからです。
若手社員が「効率」や「ワークライフバランス」を重視する一方で、ベテラン社員は「献身」や「粘り強さ」を重視します。
この違いを「問題」や「甘え」と否定するのではなく、「多様性」として認め、双方の強みを活かすことが重要です。
ルールを明文化することは、「異なる価値観を持つ者同士が、共通の土俵で協力し合うための最低限の言語(ルール)」を与える行為です。
世代間の認識の違いを認め、ルールで基準を統一することで、組織は初めて、個々の能力を最大限に引き出し、持続可能な成長へと舵を切ることができます。
採用・人材定着における労働環境の改善
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円安による物価高騰なども影響があり、採用や人材定着に苦労している中小企業が増えています。