近年、中小企業だけでなく、管理職になりたがらない若手社員が増えていると聞く経営者も多いのではないでしょうか。
後継者が育たない理由は、世の中で管理職になりたくない若手社員の状況にも似ています。
今回は、なぜあなたの会社で後継者が育たないのか、人事のプロフェッショナルの視点から解説します。
事業承継を実現するための職場改善を
なぜ後継者は育たないのか?
後継者不足の根本原因は、人材育成の失敗にあります。
後継者候補となる人材を育成する計画や取り組みが不足している、あるいは、適切な育成環境が整っていないことで、後継者候補が育たないという状況が発生しています。
後継者が育たない理由は、管理職育成の不足
後継者育成に失敗する中小企業の理由には、管理職育成の不足と考えられます。
後継者候補となり得る管理職やリーダー職への十分な経験や知識を積ませる機会を与えなかった、あるいは、能力や適性を見誤ったまま、業務や役割を与えてしまったことが挙げられます。
社風や職場環境が後継者育成を妨げる
中小企業の社風や職場環境も、後継者育成を阻害する要因となります。
例えば、以下のような職場の問題が考えられます。
- 風通しが悪い:上司や先輩への意見や質問がしにくい職場環境では、人材が積極的に学び成長することが難しくなる
- 権限委譲の不足:能力のある社員や管理職に責任ある仕事を任せ、経験を積ませる機会が少ない
- 失敗に対する寛容性の欠如:失敗を恐れ、チャレンジすることをためらう社風では、社員の成長を阻害する
- 多様性と包容性の欠如:多様な価値観を受け入れ、異なる意見を尊重する風土が不足していると、社員の能力を発揮しづらくなる
事業承継を実現するための職場改善を
職場を腐らせる人はいませんか?
後継者不足ということは、「その会社を継ぎたい」と考える人がいないことです。その原因の多くは「ヒト」であることが多いといえます。
社長の視点では優秀な社員、または職場を見ていると思っていても表面化していないなどの理由から、職場の問題を見過ごしていることが多々あります。
特に「職場を腐らせる人」は、社長の前では、「仕事ができる」「自分の前では良い上司を演じている」ことがあり、気付きにくいことがあります。
- 昭和の根性論や過剰なノルマを押し付ける上司
- 技術承継や若手育成をおこなわないベテラン社員
- 言われたことしかやらない若手社員
- 完璧主義で細かすぎる社員
etc
上記のような「職場を腐らせる人」の存在は、退職率が悪化し、本当に優秀な人材やリーダー職から退職していきます。
また、「職場を腐らせる人」は年齢が高い熟練社員とは限りません。
年齢に関係なく、職場の生産性や将来性を阻害する要因を持つ社員が対象となります。
人事制度や人事評価制度を改正し、職場環境を改善しなければなりません。
事業承継を実現するための職場改善を
誰も管理職になろうとしない残念な会社
後継者不足の根本原因は、誰も管理職になろうとしない残念な会社に原因があります。
近年、大企業においても管理職になりたがらない若手社員が増えています。
その理由の多くは、「責任だけ増えて、給料の割に合わない」「残業代がつかず、仕事量だけが増える」というものがほとんどです。
管理職の仕事は自分の業務のほか、部下の育成や評価に加えて、組織目標の達成など多岐に渡り、その大変さを間近で見ている社員がなぜ管理職になりたいと思うのでしょうか。
こうした状況を生み出しているのは、他でもない会社が管理職育成に力を入れてこなかった結果となります。
管理職が人材育成能力に長けているのであれば、部下ひとり一人の生産性も向上し、管理職の負担も軽減できます。
- 管理職育成に力を入れていない会社
- 人材育成能力や部下のマネジメント能力が低い管理職がいる会社
- 上司や先輩社員が仕事を教えてくれない会社
- 人材育成が管理職の評価項目に入っていない会社
管理職になりたくない若手社員が増えているのではなく、「今の会社で」管理職になりたくない若手社員が増えているだけです。
後継者が育ちやすい職場を構築する方法
管理職育成に力を入れていない、職場を腐らせる社員が生み出されている会社は人事を改善することで、劇的な変化を得られます。
多忙な管理職や職場を腐らせる社員を放置すると、会社全体に深刻な影響を及ぼし、後継者が現れないどころか、企業価値の低下も招いてしまいます。
後継者が育ちやすい職場を生み出すには、管理職研修の徹底と、人事評価と人材育成をセットで考えることが大切です。
管理職研修をおこなう
後継者が育たない会社は、同様に管理職を育成していないことが多々あります。
中小企業だけでなく、大企業でも中間管理職の育成には消極的な企業が多く、プレイヤーとして優秀だった社員が人材育成能力やマネジメント能力を身につけないまま、管理職になることがめずらしくありません。
管理職が育っていないのであれば、会社を継いでみたいと考える社員も現れず、さらには外部のから客観的に会社を見ている親族が会社を継ぎたいとは到底考えられません。
従業員ひとり一人の生産性が高く、働きがいのある職場環境を実現できるのは、現場を執り仕切る管理職です。
後継者候補やM&Aの買い手から価値が高いと思われるためにも定期的に管理職研修を実施しましょう。
人事評価に人材育成の項目を入れる
中小企業の多くは優れた技術を持つ製造業が多い日本では、ベテラン社員による技術承継も大きな課題です。
職人肌が多い中小企業のベテラン社員にとって、自分が苦労して身につけてきた技術を若手社員に承継することを躊躇する方もいらっしゃいます。
高い技術力が承継されなければ、その後の会社の将来にも関わり、事業自体が立ち行かなくなるため、そうした職場環境を見ている社員から後継者は現れにくいと考えられます。
しかし、人材育成は手間も時間もかかってしまい、評価もされず給料にも反映されないのであれば、ベテラン社員や管理職にとって、人材育成の優先順位が下がってしまうことも理解できます。
そのため、技術承継を迅速に行うためにも管理職やベテラン社員の事業承継(人材育成)を人事評価に盛り込むことが大切です。
人材育成を人事評価に盛り込むことで、自分の人事評価にもつながるため、技術承継が進みやすい職場となります。
人財が育たない職場である会社は企業価値が低い
誤解を恐れずにお伝えすると「ヒトを育てようとしない」社員がいる職場や会社を、誰が引き継ぎたいと思うか、誰が買いたい思うかを真剣に考える必要があります。
「人材=人財」という理念を大切にする中小企業の経営者は多数いらっしゃいます。
そんな中でも肝心の管理職やリーダー職の育成を怠り、適切な役割を与えていない企業は多く存在します。
後継者や会社を買いたい企業は、その会社の管理職がどれだけ優秀かを真っ先に評価します。
仮に管理職が育っておらず、優秀な管理職がやめている企業は、事業承継やM&Aの対象として価値が低いと判断されてしまいます。
意外かもしれませんが、財務状況以外にも人事の観点から会社を評価する傾向が増えています。
「後継者が見つからない」と諦める前に、管理職の育成が実施されているか、管理職を含む社員や職場環境に問題がないかを、まず確認してみましょう。
事業承継を実現するための職場改善を
大橋高広の人事コンサルティングについて
大橋高広の人事コンサルティングは、中小企業を対象とした管理職育成や人事評価制度の立案に強みを持ちます。
「人事を蔑ろにする企業は必ず衰退する」
多くの会社の問題は人事にまつわるものが多いと言えます。
事業承継だけでなく、中小企業が持続可能な成長を遂げ、事業承継やM&Aを成功させるためには、人事による職場改善が必要です。
事業承継や会社売却でお悩みの方はぜひお気軽にお問い合わせください。
中小企業の経営者が高齢化する中で、後継者不足が年々課題となっています。