人事用語集 賃金・退職金

退職金とは?相場や計算方法、退職金制度の種類までご紹介

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退職金(退職慰労金)とは、従業員が退職する際に企業が支給する手当です。
一般的に勤続年数や基本給、役職・等級を基準に算出し、支給されます。

近年では、退職金の在り方も変化しており、退職金の前払いや、確定拠出型年金との併用、ストックオプション制度と代用とする企業も増えています。
今回は退職金の相場や計算方法、税金、今後の制度のあり方を中心にご紹介いたします。

退職金とは

退職金とは、従業員が退職の際に支給する手当のひとつです。
従業員の勤続年数や企業への貢献度、役職等級に応じて、支給金額を決定します。

退職金には、退職一時金と企業年金制度の2種類が存在しており、それぞれ支給時期が異なります。
終身雇用制度を前提とした制度であるため、近年では退職金制度の在り方も変化しています。

退職共済金との違い

退職共済金とは、中小企業退職金共済が支給する中小企業・個人事業主向けの退職金です。
自社で退職金の積立が難しい中小企業や個人事業主向けに用意されている共済制度であり、厚生労働省所管の中小企業退職金共済事業本部が運営しています。

独力で退職金の積立が難しい中小企業や個人事業主を対象に事業主の相互共済の仕組みと国の援助によって、支給される退職金です。
掛け金の負担軽減、掛金・損金、必要経費が全額非課税、手続きが容易などのメリットがあります。

出資金5,000万~3億円以下、もしくは常時雇用従業員50~300人以下のいずれかを満たせば、加入できる退職金制度です。

そのため、退職共済金は資産規模の小さい中小企業・個人事業主向けの退職金といえます。

【参考】厚生労働省 中小企業退職金共済制度(中退共制度)

確定拠出型年金との違い

確定拠出型年金(企業DC)とは、企業が掛け金を毎月積み立てし、従業員自身が自ら年金の資産運用を行う、新たな年金制度です。

企業は掛け金の負担のみ行い、年金の資産運用のための金融商品の選択、資産配分は従業員が行うため、企業年金と異なり、将来受け取れる金額に差が生まれます。
そのため、企業の就業規則に則って、満額支給される企業年金とは大きな違いがあります。

しかし、原則満60歳まで引き出せない、退職一時金(退職金)もしくは年金として毎月受け取るかどうかの選択が可能という部分では、企業が支給する退職金とは共通点があります。

近年では企業年金と確定拠出型年金と併用する企業が増えています。

※企業年金と併用する場合は、企業が負担する掛け金は月額2万7500円まで

【参考】一般社団法人 投資信託協会 企業型DC(企業型確定拠出年金)ってなあに?

退職金の相場と計算方法

退職金は法律で義務化されておらず、企業の任意によって、制度導入の有無を決定します。
そのため、企業により退職金の計算方法や相場も異なります。

今回は一般的な退職金の相場と計算方法をご紹介いたします。

退職金の相場

退職金の相場は、従業員の退職理由によっても計算方法や支給額が異なります。
退職金を受け取る理由には「定年退職」と「自己都合退職」、「会社都合退職」の3つの理由が存在します。

定年退職の退職金の相場

定年退職を機に受け取れる退職金は大企業と中小企業、そして最終学歴により異なるケースが多く、定年退職の退職金の平均相場は以下となります。

最終学歴 大企業 中小企業
大学卒業 約2,500万円 約1,150万円
高校卒業 約2,300万円 約1,100万円

自己都合の退職金の相場

転職など自己都合による退職金の相場は企業規模、最終学歴および勤続年数で算出します。

【大企業の場合】
勤続年数 大学卒業者の退職金 高校卒業者の退職金
5年 60万円前後 50万円前後
10年 200万円前後 140万円前後
15年 400万円前後 300万円前後
20年 800万円前後 600万円前後
25年 1200万円前後 970万円前後
30年 1900万円前後 1400万円前後
【中小企業の場合】
勤続年数 大学卒業者の退職金 高校卒業者の退職金
5年 45万円前後 30万円前後
10年 120万円前後 90万円前後
15年 230万円前後 180万円前後
20年 380万円前後 300万円前後
25年 560円万前後 450万円前後
30年 750円万前後 600万円前後

一般的に勤続年数が10年を超えると退職金の伸び率が上昇していきます。

会社都合の退職金の相場

企業の業績悪化や事業縮小による会社都合の退職では、計算方法は自己都合退職と変わりませんが、一般的には自己都合退職の1.5~2倍の退職金が支払われます。

退職金の計算方法

退職金の計算方法は導入している退職金制度によって、計算方法が異なります。

基本給連動方式

基本給連動制に基づいた退職金の計算方法は以下となります。

退職時の基本給×勤続年数による支給率×退職事由係数

※支給率と退職事由係数は企業によって異なり、勤続年数や役職に応じて、加算されます。

定額方式

定額制は、基本給・企業への貢献度に関係なく、勤続年数と連動して支給されます。
定額制では就業規則に記載されている勤続年数毎の退職金を確認します。

ポイント方式

成果主義(ポイント)制では、企業が従業員に付与したポイントに応じて、退職金を計算します。
一般的なポイントには、勤続年数を評価するポイント、企業への貢献度を評価するポイントの2種類があります。

退職ポイント(勤続年数ポイント+貢献度ポイント)×ポイント単価×退職事由係数

別テーブル方式(役割等級方式)

別テーブルの退職金計算方法では、基本給連動制の計算方法と同じですが、退職時の基本給の部分を基礎金額(役職・等級に応じた基礎金額)で計算します。

基礎金額(役職・等級に応じて変動)×勤続年数による支給率×退職事由係数

退職金の税金の計算方法

退職金は従業員への給与手当のひとつであり、退職所得とみなします。
そのため、支払う際は所得税を差し引いて、支給します。

退職所得とは

退職所得とは、退職手当や一時恩給など退職を機に一時に受け取る給与、またはその性質を持つすべての給与を指します。
退職金は賞与と同じ性質を持っていると考えられ、給与所得として課税されます。

国民年金法や厚生年金法、その他の規定に基づいて、支給されるすべての一時金は退職手当となるため、支給の際は課税が必要です。

【参考】国税庁 No.2725 退職所得となるもの

退職所得の計算方法

退職金(退職所得)の算出は、以下の計算方法で行われます。

退職所得の計算式

退職所得の金額は、原則、以下の計算式で行われます。

(収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額

※確定給付企業年金規約に基づき、支給される退職一時金などで、従業員自身が負担した保険料又は掛金がある場合、上記の計算式で算出された金額から従業員が負担した保険料又は掛金の金額を差し引いた残額を退職所得の収入金額とします。

【参考】国税庁 No.1420退職金を受け取ったとき(退職所得)

退職所得控除の計算方法

退職金所得控除とは、勤続年数に応じた金額を退職金から控除できる税制措置です。
退職金所得控除の算出は、以下の計算方法で行われます。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×20年以下の勤続年数

※計算結果が80万円未満の場合、80万円

20年以上 800万円+70万円×(20年以上の勤続年数-20年)

※退職の直接理由が障碍者となったことの場合、100万円が加算されます。

※前年以前に退職金を受け取った、または同一年中に2か所以上から退職金を得た場合、計算方法が異なる場合があります。

【参考】国税庁 No.1420退職金を受け取ったとき(退職所得)

退職金制度の種類

近年では、退職金制度も変化しており、さまざまな方法で退職金(またはそれに準ずる手当)が支給されています。

退職一時金制度

退職一時金制度とは、従業員が会社を退職する際に一時金を支払う制度です。
退職一時金には「基本給連動方式」、「定額方式」、「ポイント方式」、「別テーブル方式」の4種類が挙げられます。

基本給連動方式

退職時の基本給に勤続年数による支給率と退職事由係数を掛け合わせて、退職金を計算する退職金制度です。
多くの企業が採用している退職金制度であり、勤続年数が長くなるほど支給される退職金が増えます。
そのため、年功序列型の退職金制度と認識されています。

定額方式

基本給や役職・等級に関係なく、勤続年数のみで退職金を計算する退職金制度です。
退職時の基本給や役職・等級、企業への貢献度が考慮されないため、年功序列型の退職金制度といえます。

ポイント方式

職務給別、貢献度、勤続年数、職能・資格、人事考課をポイントに換算し、1ポイントあたりに単価を掛けて、支給する退職金制度です。
ポイント単価の上昇率は企業の経営状況によっても調整でき、中途入社の優秀な人材も不利にならないメリットがあります。

別テーブル方式

役職・等級別に振り分けた算定基礎額表(等級別、勤務年数別)に基づいて、退職金を支給する退職金制度です。
従業員の能力や貢献度によって、変動するため、成果主義を中心とした企業の退職金と相性が良い退職金制度です。

厚生年金基金制度

厚生年金制度とは、「厚生年金基金法」に基づく退職年金制度で、公的年金へ独自に上乗せ給付を保障する制度です。
厚生年金基金制度では、企業・従業員の掛け金全額(それぞれ損金扱い、社会保険料控除)が全額控除されます。

企業年金制度

企業年金制度には「厚生年金基金制度」、「確定給付企業年金制度」、「確定拠出型年金制度」の2つが挙げられます。

確定給付年金制度(DB)

確定給付年金制度とは「確定給付企業年金法」に基づいた企業年金制度です。
事業主または企業年金基金が運営し、掛け金は原則企業が全額負担します。
しかし、資産運用がうまくいかなかった際でも従業員には予め決められた退職金を支払う必要があります。

確定拠出型年金制度(DC)

確定拠出型年金制度とは、「確定拠出年金法」に基づく企業年金制度です。
企業が掛け金を捻出し、従業員自らが金融商品の選択と年金資産運用を行い、掛け金と運用結果によって、将来受け取れる退職金額が異なります。

確定拠出型年金制度には、企業が掛け金を捻出する「企業型確定拠出年金制度」と個人が掛け金を捻出する「個人型確定拠出年金制度(iDeCo)」の2種類が存在します。

また、確定拠出年金法の改正により「マッチング拠出」が可能となり、企業型確定拠出年金制度に社員が掛け金を拠出することも可能となりました。

退職金前払い制度

退職金前払い制度とは、退職金を月々の給与・賞与に上乗せして、社員が在職中に支払い続ける退職金制度です。
年功序列型退職金制度や企業年金制度を廃止し、退職金支給という企業の将来の債務を抑えるメリットがあります。
近年では導入する企業が増えており、今後も拡大していくことが予想される退職金制度です。

まとめ

  • 退職金とは従業員退職する際に支給される手当のひとつで、企業への勤続年数、貢献度、役職等級に応じて、支給される一時金である。
  • 退職金の相場は企業規模、勤続年数、最終学歴によって算出することが多い。一般的には勤続年数が長く、大企業の大学卒業者が多く年金が支払われる傾向が強い。また、定年退職、自己都合、会社都合によっても退職金の相場が異なる。
  • 退職金の計算方法は導入している制度内容によって異なり、一般的には基本給連動方式やポイント方式、別テーブル方式が多い
  • 退職金制度は確定供出型年金制度や退職金前払い制度などの新たな制度が生まれており、今後、社員自らが運用していく退職金制度が増えていくと予想される。
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大橋 高広

大橋 高広

株式会社NCコンサルティング 代表取締役社長|人事コンサルタント・社外人事部長&社外CHRO・ビジネス作家|あなたの会社の採用・育成・定着を強くする人事のプロ|人事評価制度と面談が得意|最近はブランディングとマーケティングのご相談も急増中|著書重版|現状維持は衰退|プラス思考の方と互いに高め合っていきたい|新刊執筆中

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