会社では様々な会議が行われます。
代表的なものは「営業会議」ですが、あなたは「人事会議」という会議を聞いたことがありますか?
耳慣れない会議かもしれませんが、実は人事制度上、極めて重要なキーワードです。
今回は人事会議についてお話したいと思います。
営業会議はあっても、人事会議はない!?
多くの中小企業では、営業会議はあっても、人事会議はありません。
経営は「ヒト・モノ・カネ」とよく言われますが、「ヒト」に関する会議とも言うべき人事会議がないのはなぜなんでしょうか?
理由は3つあると思います。
- 人の問題は分かりづらい。
人の問題、つまり社員の問題はなかなか表面化しません。たとえ会社への不満、人事に対する不満があったとしても、そこには潜伏期間があり、いきなり表面化することは少ないのです。表面化しないということは、見つけることも難しいため、一見すると「問題なし」ということになってしまうのです。問題がないのであれば、会議など必要ないことになります。 - 明確なターゲットがない。
営業会議において議論の中心になるのは「どうやって売上目標を達成するか!」ということです。売上目標という明確なターゲットがあるからこそ、会議も成り立つのです。
一方、人事においては売上目標に相当する明確なターゲットが設定しずらいために、会議を開いても議論が進まないのです。 - 社長が人事権を握っている。
多くの中小企業では人事権を持っているのは社長です。つまり、人事は社長の仕事なのです。と言うことは人事に対する問題点の指摘が即、「社長批判」になってしまうのです。そのような環境で仮に人事会議が行われたとしても議論が進むわけがありません。
人事会議が必要な理由
昨今、「働き方改革」というスローガンの元、「時短」という言葉を聞く機会が多くなっています。
その時短を実現するために必ずと言って良いくらいに挙がるのが「会議を減らす」という目標です。
確かにムダな会議を減らすことが大切であることは言うまでもありませんが、本来会議には「情報の共有」や「進捗の確認」といった大切な役割があるはずです。
例えば、A社との取引が成立した過程を共有すれば、B社との営業交渉の参考になるので営業会議での情報共有は大切なのです。
このようなことは営業だけでなく人事でもあり、例えば、技術の習得が早いA君の行動は同期入社で技術の習得が遅いB君の指導において参考にするべきなのです。
少数精鋭の中小企業において、いかに効率的に人を育てるかはとても大切です。
そのための会議であれば決してムダとは言えないのです。
人事会議を行うために必要なもの
人事会議の重要性はご理解いただけたと思うのですが、人事会議を行うためには前提条件があります。
第1章でお話した通り、人事会議を行うためには、3つの条件をクリアしなければなりませんでした。
- 人の問題は分かりづらい。 ⇒ 問題を見つけやすくする。
- 明確なターゲットがない。 ⇒ 明確なターゲットをつくる。
- 社長が人事権を握っている。 ⇒ 社長に人事の仕事をさせない。
どのようにして、3つの条件をクリアするのでしょうか?
答えは「人事部をつくる」ことです。言い換えると、人事制度を構築・運用することです。
- 問題を見つけやすくする。 ⇒ 「従業員意識調査」の実施
- 明確なターゲットをつくる。 ⇒ 「人材育成計画」の策定
- 社長に人事の仕事をさせない。 ⇒ 人事は「人事部」の仕事
「従業員意識調査」、「人材育成計画」はいずれも人事制度にはなくてはならないものです。
つまり、人事会議を行うためには、人事部、人事制度が必要なのです。
参考記事⇒従業員意識調査は人事部づくりの実質的なスタートです。
参考記事⇒人材育成とは:「人が育つ企業と育たない企業の違い」
また第2章でお話した通り、人事においても情報の共有はとても大切です。
と言うことは、人事制度をうまく機能させるためには人事会議が必要だと言うことにもなるのです。
人事会議では何をするのか
人事会議は具体的にどのような体制で、何をするのでしょうか。
要点をまとめてみました。
- 参加者
社長をはじめとした経営幹部、評価者 - 開催タイミング
月に1回 - 人事評価者による発表
評価者(通常は上司)は育成計画に基づいて、自らが担当する被評価者(通常は部下)に対する「評価」、並びに評価者が行った「指導」について発表します。
この時、他の評価者は「何か参考にすべき点はないか」といった視点で発表を聞くことも大切です。 - 参加者による議論
評価者が行った発表に対して、良かった点、改善すべき点などを議論します。
決して評価者の「吊るし上げ」の場ではないことに注意しなければなりません。 - 修正計画の策定
評価者は参加者からいただいた改善点や他の評価者の発表内容を参考にして、次月の育成計画を修正します。
もちろん、修正がないケースもあるでしょう。
まとめ
人事制度は会社とともに成長していかなければなりません。
会社は1年に一度、決算を行います。
そして蓄積された決算データを元に分析を行うことで、自社の強み、弱みを把握することができるのです。
これは人事でも同じなのです。
人事会議で発表された「評価」、「指導」の内容、それに対する「意見」、そして「修正」すべての情報が共有、そして蓄積されることで、分析を行うことができ、さらに効率的な人材育成に役立てることができるのです。