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マタハラ(マタニティハラスメント)とは、女性労働者の妊娠や出産をきっかけとした個人または組織的な精神的・肉体的な嫌がらせ全般を指します。
少子化対策に逆行する組織内の不当な扱いとして問題視されています。

今回はマタハラが起きる原因や対策、人事視点でのマタハラ防止のポイントを解説します。

マタハラ(マタニティハラスメント)とは

マタハラとは、妊娠・出産をきっかけに女性労働者に不利益を被る行為全般(言動による嫌がらせも含む)を指します。
産休・育休を認めない行為や退職推奨、減給・降格・一方的な就業形態の変更などの組織的な対応に加え、上司・同僚による古い価値観(一方的な女性への気遣いも含む)の押しつけや、心ない言動などの個人間でおこなわれるいじめも含まれます。

先進国の中でも女性の就業率が低い日本で起こりやすいハラスメントのひとつであり、政府が主導する働き方改革や少子化対策に逆行する行為として対策が急務とされています。

マタハラの原因

マタハラの原因には、従来の日本企業が持つ性別役割分業をはじめとした世代間の価値観ギャップと、長時間労働が挙げられます。

性別役割分業とは「男性は仕事、女性は家庭」といった、性別により役割や労働を分ける前近代的な社会制度であり、日本の発展を長年支えた価値観であります。
しかし、女性の活躍を推進する現代の流れに逆行する価値観として、近年では見直すべき古い価値観として認識されています。
経営者や管理職に就く割合が多い50~60代世代にも浸透しており、その結果、妊娠・出産した女性労働者への無理解または過剰な気遣いがマタハラに発展していると考えられます。

近年、問題視されている長時間労働もマタハラの原因となっています。
深刻な人手不足は従業員一人あたりの業務量を増やし、「妊娠・出産による時短勤務や休業は上司・同僚に大きな負担となる」との考え方が広がってしまい、その結果、退職推奨やいじめなどに発展すると考えられています。

法律上の義務(ルール)

マタハラは「男女雇用機会均等法 第9条第3項(抄)」で、女性労働者の妊娠・出産に関わる事由により、解雇または不利益を取り扱いに該当する行為として、法律で禁止されています。

また、事業者は「男女雇用機会均等法 第11条の2及び育児・介護休業法第25条」に則り、マタハラに関する防止措置を講じることが義務付けられています。

そのため、事業者にはマタハラに対する以下の方針に沿った対策が求められます。

  • マタハラの内容・企業としての方針を明確化し、その周知や啓発の実施
  • マタハラ行為者への厳正な対処方針の共有
  • 相談窓口の設置と適切な対応
  • 被害者・行為者への適正な措置の実施
  • 再発防止策の実施

マタハラは、大きく以下の2種類に分けられます。

  1. 制度の利用をきっかけに起こる「制度等の利用への嫌がらせ型」
  2. 妊娠・出産に関わる状態(つわりなどの体調不良)に対する「状態への嫌がらせ型」

そのため、効果的なマタハラ対策を実施するためには、法律が定める方針に則り、それぞれの嫌がらせに効果的な対策が必要です。

※厚生労働省が定める具体的な事由、またはその他の不利益扱い例は以下の参考リンクをご確認ください。

【参考】厚生労働省 職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!

【参考】厚生労働省 職場でつらい思いしていませんか?

マタハラ対策への取り組み

マタハラは、世代間の価値観ギャップや長時間労働を起因とした妊娠・出産を控える労働者への無理解から生じます。
そのため、社員全員が労務管理に関する正しい知識を得て、制度を利用しやすい社風の実現や社員の働き方を見直すことで、未然に防ぐことができます。

労務管理に関する知識の徹底

妊娠・出産をきっかけにした降格や減給、解雇・退職の強要は、明確な法律違反となります。
そのため、労務管理を担う管理職を中心に、労務管理に関する知識を徹底的に周知しなければなりません。

また、女性労働者から妊娠の報告を受けた時点で、人事部門でも法律に則った対応(時短勤務や休業の取得、配置転換など)を迅速に行います。
中でも労務管理や人事部門の配置が進みにくい中小企業ほど、違反行為に該当する行為が職場に蔓延しがちです。
人事部が主体となり、現場の社員全員に妊娠・出産を控えた労働者への適切な労務管理を促す必要があります。

制度を利用しやすい社風の実現

妊娠・出産による時短勤務や配置転換、男性の育休取得は労働者の権利です。
そのため、社員が自分自身を含む労働者の権利を理解した上で、妊娠・出産に関わる制度を積極的に利用できる社風を実現しなければなりません。
妊娠や出産は誰もが経験しやすいこととして理解を深め、制度利用が特別な行為ではないことを周知しましょう。

また、職場復帰に対する理解も、制度を利用しやすい社風の実現に必要な考え方です。
人事部として積極的に制度を利用するように繰り返しのアナウンスが必要です。

働き方の見直し

マタハラに発展する妊娠・出産による無理解は、職場の働き方を見直すことでも改善できます。
マタハラを防ぐためには、専業・分業中心の業務体制ではなく、チームメンバー同士が情報共有を行い、相互補完的に業務を進める体制が必要です。

また、インターネットの発展や柔軟な働き方に対する理解が広がり、個人が能力を発揮できる環境が整いつつあります。
さまざまな家庭環境を持つ人材が能力を発揮しやすいように、テレワークや在宅勤務などの制度を導入することも効果的です。
柔軟な働き方を促進する制度は、妊娠・出産を控えた労働者に活躍の場を与え、結果的に優秀な人材の定着率向上や人材採用の活性化にもつながり、人手不足の解消にもつながります。

人事視点でのマタハラ防止のポイント

マタハラ防止は事業者の義務であると同時に、効果的なマタハラ防止の実現には、現場の社員が根本的に変わることが前提となります。
そのため、マタハラを防止するためには、人事視点でのアプローチ方法を検討しなければなりません。

妊娠・出産への理解がある人材の採用

転職が当たり前となりつつある現代では、人材採用の方法が企業の命運を決めると言っても過言ではありません。
しかし、能力や実績を重視した採用は、合理主義かつ利益偏重主義が職場に蔓延し、マタハラの温床になりかねません。

会社が女性の働きやすい職場環境を目指す場合、女性が活躍できる職場を具体的に示し、その考え方や方針に共感できる人材の採用を重視することで、マタハラを含むあらゆるハラスメントを防げます。
人が長年培った価値観や考え方を急に変えることは至難の業です。
そのため、採用段階から妊娠・出産に対する会社の考え方に合う人材を選定することがポイントです。
社員教育のコストを削減し、自然と妊娠・出産に理解のある職場環境へと変化させることができます。

自発的に動き出す社員の育成

妊娠・出産への理解を深めるためには、社員同士の相互理解と相互に業務を補完する体制が不可欠です。
この相互補完体制の実現には、自発性に富んだ社員の育成が欠かせません。
そのため、経営者の思いや社員の希望を踏まえた等級制度の下、具体的な目標値を定めた評価基準と処遇がリンクした評価制度を確立しましょう。

自発的に行動できる評価制度は、妊娠・出産を控えた社員の境遇を自分事として捉え、どのようにチームとしてのパフォーマンスを維持・最大化できるかを考える人材を増やすことができます。
この制度により、マタハラそのものが発生しない職場環境を実現できます。

諸手当の見直し

マタハラの防止には、諸手当に対する不満の解消も効果的です。
中でも、配偶者や子供がいる従業員に支給される家族手当は、独身の従業員から見ると不平等に映ります。
男女ともに生涯未婚率が高まる現代において、家族手当は特権となりつつあり、マタハラにつながる原因となってしまいます。
「独身者もいずれ結婚するだろう」といった勝手な思い込みを捨て、独身者も相応の諸手当を受けられるよう、諸手当を見直さなければなりません。

また、同じ家族手当でも勤続年数に応じて支給金額が変わるようでは、平等な諸手当とはいえません。
家族手当や独身の従業員への処遇も含めて、支給基準が不明確な諸手当を徹底的に見直すことで、社員の不満を最小限に押さえ、結果的にマタハラを防ぐことにもつながります。

まとめ

マタハラへの対策は事業主の義務であり、妊娠・出産をきっかけとした従業員の不利益は全て違法となります。
そのため、企業は厚生労働省が提示する方針に沿ったマタハラ対策の実施に加えて、マタハラを防ぐ職場体制の実現や人材採用・育成、そして諸手当の見直しなど人事全体の課題として取り組む必要があります。

マタハラの蔓延は、優秀な人材の流出や人材の採用難に直結する深刻な問題です。
人事部が主体となり、マタハラを防ぐための取り組みを積極的に行いましょう。

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