人事制度とは? 目的や種類、今後のあり方から注目の人事制度をご紹介!

労務管理を含めた従業員の評価・処遇を決定する人事制度は、時代の流れとともに経営計画と密接に絡み合う経営戦略へと変化しています。

今回は人事制度の意義や目的、今後に求められる人事制度のあり方から最新の人事制度までをご紹介いたします。

人事制度とは

人事制度とは、「等級制度」、「評価制度」、「報酬制度」、そして「組織・人材開発制度」の4つを指す仕組みの総称です。

従来の管理業務中心から社員のモチベーション・従業員エンゲージメント向上につなげるための経営戦略へと認識が変わりつつあります。

人事制度の意義・目的

広義の意味で、労務管理を含む従業員の等級や評価、処遇を決める方針や仕組みである人事制度は、事業目的を達成するための経営戦略を人材マネジメントに落とし込んだ経営計画と認識されるようになりました。

そのため、人事制度の目的も社員ひとり一人の能力を最大限に発揮させ、仕事に対するモチベーション向上や組織・個人の信頼関係(従業員エンゲージメント)の構築につながる環境作りへと変化しています。

人事制度の種類

人事制度は「社員の給与や処遇を決める基準(等級制度、評価制度、報酬制度)」と「人材マネジメント(組織・人材開発制度)」の2つに大別されます。

自社の経営理念や社風、従業員構成を考慮した上で、両者を連携させることで「企業価値の向上」や「競争力の強化」につながります。

ではこの4つの制度がそれぞれどのようなものなのか、ご説明していきます。

等級制度

等級制度とは、社員の能力や職務内容、役割に応じて分類・序列化する制度です。等級制度は以下の2種類に分けられます。

職能資格制度

業務処理能力(職能)を基準に会社に与える効果を評価して、支払賃金を決める制度です。年功序列制度や終身雇用体制を前提とした等級制度です。

役割等級制度

職能と職務の2つを「役割」と定義し、社員を分類する制度です。社員の能力の他、企業が期待する業績や役割の結果に対して、ランク付けを行い、賃金を決定します。長らく、年功序列制度や終身雇用体制を踏襲してきた大企業も本格的に導入し始めている制度です。

評価制度

評価制度とは、社員の能力や企業への貢献度(業績)、業務内容の評価基準を定めた制度です。
四半期・半年、一年の評価期間を設けて評価します。

近年ではOKR(目標と結果を可視化し、組織と個人の目標のズレを防止するための目標設定方法)を導入し、評価制度を有効に機能させる動きが広がっています。

報酬制度

報酬制度とは、評価制度に基づき、社員の貢献度を評価し、給与や賞与などの処遇を決定する基準、または制度です。

組織・人材開発制度

組織・人材開発制度とは、人材マネジメントの一環で社員の能力を最大限に発揮させるため取り組み全般を指します。

社内公募制度や研修(OJTやブラザー・シスター制度など)の他に、多様な働き方に対応したテレワークや時短、ジョブ・リターン制度(出産・育児・介護休暇からの復帰)なども組織活性化につながる制度も含まれます。

今後、求められる人事制度とは

深刻な人手不足と働き方に対する多様な価値観の浸透から、人事制度も変化しています。今回は、今後求められる人事制度のあり方をご紹介いたします。

優秀な人材の定着につながる制度

人材不足が深刻な日本企業において、今後は「どうやって優秀な人材を定着させるか」が課題となります。

また、優秀な人材は企業への貢献度が高いため、自分の裁量を活かせる労働環境を求めています。

そのため、社員の能力と職務を明確にした役割等級制度や異なるライフステージ(結婚や出産、介護)を持つ社員に合った人事制度の導入が進んでいます。

フレックス制度や時短勤務の他、リモートワークなど、働き方を選べる労働環境は離職防止や職場復帰率を高める効果があります。

可視化された評価項目に基づいた制度

近年では、従来の評価期間(四半期・半年・一年間)だけでなく、頻繁に社員と目標・進捗状況を確認し、目標達成率を高める取り組みが実施されています。

中でもOKRを導入した評価制度が注目を集めています。

OKRとは、組織の達成目標と主要KPIをリンクさせ、組織・個人の方向性と業務を明確にする目標管理方法です。

主要KPIを基準に定期的な見直しが行われるため、評価基準もわかりやすくなり、公平・公正な社員の評価と軌道修正が可能です。

従来の評価制度は、職能資格制度を前提としており、評価者の感情や思い込みによる評価が横行していた背景があり、社員の不満を助長すると指摘されていました。

そのため、今後は評価者や評価対象者双方が納得できる可視化された評価制度が基準となります。

戦略人事に基づいた人事制度

戦略人事とは、経営戦略と人材マネジメントを連携させ、企業全体の競争力を高める考え方です。

短期間で変化し続ける経営環境に対応するためには、打ち出した経営戦略に対して、迅速な人員配置が求められます。

一般的な人事制度では経営戦略の実行と人員配置にタイムラグが発生し、機会損失が生じてしまいかねません。

そのため、人事部担当者は経営陣の考え方や中長期的な経営計画を理解し、「現在の人事制度が組織・社員個人にどのような影響を与えているか」を数値に基づいた根拠で分析しなければいけません。

戦略人事では、「組織・人材開発制度」を中心にてこ入れされており、タレントマネジメント(社員ひとり一人に着目し、社員が持つ能力を最大限に発揮させるマネジメント、または教育)や絶対評価制度などが該当します。

現在、注目されている人事制度

人事制度は、業種や経営理念、そして社内風土を考慮した上で策定されます。今回は注目されている人事制度の一部をご紹介いたします。

多様な働き方に対応した人事制度

深刻な人手不足を解消する上で、女性・高齢者の社会進出への対応は人事部の大きな課題です。

ライフステージが異なる社員に適した人事制度の需要が高まり、出産・育児・介護に関わる社員向けにリモートワークや時短勤務の導入や、20代や未婚の社員が活用できるキャリアアップ・スキル向上の支援が進んでいます。

近年では、社員にポイントを配布し、社員自らが福利厚生を選択できる福利制度と連携し、社員の裁量で働き方を実現する人事制度も導入されています。

OKR・ノーレーティングによる評価制度

社員個人の目標やタスクと連動させ、進捗状況を可視化するOKRは、成長が著しい新興企業やIT大手企業中心に導入されています。

OKRの実施は、社員に「企業からどんな役割や業務、成果を期待されているか」を把握できるため、従業員エンゲージメントの向上につながります。

また、今まで主流だったレーティング評価は「優秀な人材ほど公平・公正な評価が下されにくい」と指摘されていました。

タレントマネジメントが注目を集める中、社員ひとり一人に向き合い、評価するノーレーティング評価(絶対評価)を重視する企業が増えています。

しかし、ノーレーティング評価は評価者の負担が増えるため、人事部や情報システムによるサポートが欠かせないため、規模が大きい企業はIT投資の検討も必要です。

ピアボーナスなどの報酬制度

ピアボーナスとは、社員の行動や業務を社員同士が相互に評価し、報酬を送り合う制度です。
一般的に社内や福利厚生で使用できるポイントを報酬に設定しています。

同一目線の社員が評価することで、評価者が見過ごしている社員の成果や姿勢をキャッチアップし、組織内の絆や信頼関係の強化につながります。

一方で、上司から部下へ、部下から上司へのピアボーナスの実施も可能なため、感情・好みによる評価や忖度につながりやすいデメリットが指摘されています。

ピアボーナスでは同等の役割を担う社員同士での実施が望ましいといえます。

まとめ

現在の人事制度は、従来の管理業務を前提とした制度ではなく、「社員個人の能力を最大限に発揮させる」、「組織の活性化につなげる」ための制度へと変化しています。

IT技術の発展により、社員の目標や成果の可視化が可能となり、従来のコンセプトとは異なる人事制度が効果を上げています。

効果的な人事制度の策定には、経営戦略と連動した戦略人事が必要です。
現在の人事制度が経営戦略と連動・機能しているか、ぜひ見直してみてください。

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ABOUT US
大橋 高広
株式会社NCコンサルティング 代表取締役社長|人事コンサルタント・研修講師|東洋経済オンライン記事投稿・日本経済新聞での書籍紹介│新刊『リーダーシップがなくてもできる職場の問題30の解決法』(日本実業出版社)Amazonランキング「マネジメント・人材管理」6位│その他著書『バカはブラック企業に入りなさい』(徳間書店)、『人事部のつくり方』(主婦の友社)│人事制度の設計と運用・管理職研修・職場改善研修・新卒研修・若手社員研修など「人事評価制度の設計と運営」を軸に、「組織文化形成・管理職育成・職場改善」など人事全般に関するサポートを提供